手記&リポート


最前線を行く 私の活動リポート
心をいやす「乗馬セラピー」普及を

■浜四津敏子代表代行(参院議員)
 動物と触れ合うことで心をいやし、身体的、精神的な治療効果を生むアニマルセラピー(療法)が注目を集めています。新企画「最前線を行く」(不定期掲載)の初回は、この問題に積極的に取り組む浜四津敏子代表代行(参院議員)に、乗馬セラピーの現場をリポートしてもらいました。


『ボランティアの真心に支えられ、障害児と家族が笑顔の乗馬会』

 私は、障害がある人の心をいやし、機能回復にも大きな効果を発揮する「乗馬セラピー」などのアニマルセラピーを普及させるため、関係者の方々とともに取り組みを続けてまいりました。先日も、夏休みの日曜日、東京・区立世田谷公園で行われている、東京障害者乗馬協会(渡辺廣人会長、会員約50人)主催の「世田谷乗馬会」に、都議会公明党の中島義雄政調会長とともに訪問し、関係者の方々から現状を伺ってきました。


『脳性麻痺の子が馬上で歩行体験』

 「もうすぐだから、我慢しないとね」

 会場になっている公園に着いて最初に飛び込んできたのは、馬に乗るのが待ちきれない男の子を優しくなだめるお母さんの姿でした。

 「うちの子は馬が大好きなんです。学校ではストレスもたまりますが、月に1回参加する乗馬会が楽しみで、毎日頑張っています」とお母さん。ダウン症の息子さんは公立小学校の通常クラスに通う1年生で、凛々しい乗馬服姿。ようやく順番が来ると馬にまたがって、背筋をまっすぐ伸ばして誇らしげに満面の笑顔を見せてくれました。

 この日の乗馬会には、山梨県から専用トラックで運ばれてきた木曽馬が4頭。「性格は穏やかで、馬の背中の高さも130センチ程度と、サラブレッドよりも30センチ低く、障害者のサポートがしやすい」とのことでした。

 乗馬歴4年という脳性麻痺の男の子(11歳)のお父さんに話を伺うと、「初めのころは馬に乗っても、くたくたと前にうずくまる感じでしたが、1年をすぎたころから変化が表れ、今では体を起こした姿勢を保てるようになりました」。同協会の水野真澄副会長が「馬に乗ることで、歩くのと同じ刺激を上半身に与え、歩くことを疑似体験できるんです」と説明してくださいました。

 この日が初参加のダウン症の男の子(19歳)のお母さんは「『とにかく乗馬を楽しんで』と言われ、参加することにしました」。わが子が馬の背にまたがると、「乗った! 乗った!」と笑顔に。「『気を取られるので近くに行かないように』と言われています」と、離れた所から見守る姿が印象的でした。


『運営費など支援の必要性を痛感』

 同協会では、3月から12月にかけて毎月2回から4回、世田谷公園と山梨県内の木曽馬牧場で乗馬会を開催しています。

 乗馬会の運営について、渡辺会長は「都のスポーツ団体から年間10万円の補助を受けていますが、これでは馬4頭を1回、借りることもできないので、会員の参加費のほか、一般の方にも有料で乗馬を楽しんでもらい、費用を補っています。日常的な運営費をぜひ支援してほしい」とのお話がありました。

 また「私たちの協会から、昨年のパラリンピック・アテネ大会に4人が出場しましたが、出場権を得るための世界選手権参加費などはほとんど自前でやらなければならない」と厳しい財政事情を吐露してくれました。

 今回、乗馬会を訪問し、こうした取り組みがボランティアの真心によって支えられていること、そして強力な後押しが急務であることを改めて痛感させられました。


『「高齢者、障害者ケアに一定の役割」と小泉首相も前向き答弁』
『参院代表質問で国の後押し要請』


 私は、アニマルセラピーの普及とボランティア支援を促すため、昨年10月15日、この問題を参院本会議での代表質問で取り上げました。

 この中で、高齢者施設で行われているアニマルセラピーについて、訓練された犬が高齢者にぴったり寄り添い、それまで動かなかった高齢者の手が、いつの間にか動くようになったり、表情が全くなかった高齢者の顔に少しずつ表情が表れていく効果があることを紹介しました。

 また、千葉県内でボランティアが行っている乗馬セラピーを視察したことに触れ、乗馬を繰り返すことによって、自閉症の子どもに笑顔があふれ、足に障害のある子どもの運動機能が少しずつ改善していく事例があることも指摘させていただきました。

 一方、米国では、アニマルセラピーについて長年の歴史と実績があること、自閉症や認知症の改善やリハビリ効果などに力を発揮し、刑務所内での犯罪者更生、社会復帰などにも大きな効果を挙げていることを指摘致しました。

 その上で、私は「わが国では、アニマルセラピーをボランティアで行っている民間の方々は、さまざまな費用を自ら捻出しながら、ご苦労されている。アニマルセラピー普及のために、ボランティア団体への支援策をはじめ、きめ細かい施策に国は積極的に取り組むべきだ」と訴えました。

 答弁に立った小泉純一郎首相は、ペットが日常生活を豊かにする役割が大きいと述べ、「高齢者や障害者のケアの現場でも、動物が一定の役割を果たしていくことは意義のあることだ」とその重要性を認め、「アニマルセラピーの有効性が認められれば、その普及方策をさらに検討していきたい」と積極的に取り組んでいく姿勢を示しました。

 国による手厚い支援を一日も早く実現するため、全力で取り組んでいく決意です。



『アニマルセラピーとは』

 動物との触れ合い、交流によって精神と肉体機能を向上させる療法の一つ。

 最も長い歴史を持つ乗馬セラピーは、古代ローマ帝国時代、戦争で傷ついた兵士のリハビリに用いられていたのが始まり。

 馬の歩くリズムに合わせて生じる上下動が、身体や脳に刺激を与え、車イス生活の人の筋力衰え防止に効果がある。脳性麻痺の人には、馬にまたがることで股関節や筋肉がほぐれ、無表情だった顔に明るい表情を見せるようになり、自ら歩行練習を始めたとの報告もある。自閉症児に対しても、馬との一体感を感じることで、生きている実感を得て、周囲の人間に目を向けさせるきっかけになる可能性が大きいことが報告されている。

(2005年9月25日付 公明新聞)