個人の多様な生き方認める時代へ、婚姻時に同姓も別姓も自由に選択できる制度の実現を。
欧米では別姓を容認する国が多い。
21世紀は「女性の世紀」といわれ、昨年(2000年)12月には政府の「男女共同参画基本計画」が策定されるなど男女平等の施策づくりが進んでいますが、その中で動きが止まっている施策があります。夫婦が同じ姓を名乗る(夫婦同姓)のも結婚前の姓を別々に名乗る(夫婦別姓)のも自由――とする、いわゆる「選択的夫婦別姓」制度の導入問題がそれです。すでに5年前の1996年2月に、法相の諮問機関である法制審議会が5年もの歳月をかけて審議し「選択的夫婦別姓」制度の導入を答申しています。20世紀中には導入されると思われていたにもかかわらず、自民党内の調整がつかず、ついに実現に至らないまま新しい世紀を迎えてしまいました。
Q:結婚して夫婦になる時、姓の決め方は国によって違うの? 日本は同じ姓ですよね。
A:夫婦の姓の決め方については、【別表】のように国によりさまざまですが、欧米では夫婦別姓容認が大勢を占めています。米国では、コモン・ロー(一般的な慣習)として自分の姓は自由に選ぶ権利があるとされ、同姓、別姓、あるいは夫の姓と妻の姓の結合姓から選択できます。欧州では、1978年に欧州議会が夫婦の姓の平等に関する決議を採択し、各国が選択的夫婦別姓を認める法改正を行いました。
これに対し、日本では民法750条で「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫または妻の氏を称する」と定められており、夫婦同姓でなければならないとされています。夫婦別姓は認められていません。しかし、いくら夫の姓でも妻の姓でもいいとはいっても、結婚によって改姓するのは九八%までが女性、というのが実情です。
| <諸外国における夫婦の姓> |
| 同姓、別姓、結合姓から選択 |
米、英、オーストリア、中国など |
| 同姓、別姓から選択 |
デンマーク、ロシアなど |
| 夫は変わらず妻のみ選択 |
オランダ、ハンガリー、台湾など |
| 夫は変わらず妻のみ結合姓 |
イタリア、アルゼンチンなど |
| 別姓のみ |
カナダ・ケベック州、韓国など |
| 別姓原則、妻は夫姓も使用可 |
フランス |
| 同姓のみ |
日本 |
| 同姓のみ、夫の姓が夫婦の姓 |
インド、タイ |
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Q:5年前に法制審議会が出した答申の内容は?
A:法制審が答申した選択的夫婦別姓制度の骨子は、(1)婚姻届の際に「夫婦同姓」とするか、「夫婦別姓」とするかを選択する(2)「夫婦別姓」を選んだ場合、子どもの姓は結婚時にあらかじめ決めておき、一方の親の姓に統一する(3)子どもの姓は家庭裁判所の許可を得て変更できる(4)現在の同姓の夫婦も別姓に変更できる――というものでした。このような答申が出された背景には、女性の社会進出があります。働く女性が改姓によって不便、不利益を受けるケースが多くなっており、結婚後も旧姓や通称の使用を認めている民間企業も今や珍しくない。女性の社会進出に伴い、結婚後も独身時代と同じ姓でありたいとする希望が高まってくるのは自然でしょう。
さらに、国際社会の動向もあります。1979年の国連総会では「女子差別撤廃条約」が採択され、また国連の人権委員会が1990年に採択した国際人権規約についての一般的意見では「各配偶者がその元の姓の使用を留保し、または新たな姓の選択において平等の立場で参加する権利が保護されなければならない」としています。そうした新しい時代の進展の中で、法制審が1991年から5年間にわたって法曹界など関係各方面の意見も聴取し、国民世論の動向も考慮しながら見直し作業を行い、選択的夫婦別姓制度の導入を答申に盛り込んだ意義は大きいと言えます。
「選択的夫婦別姓」制度は、これまでの夫婦同姓を継続する一方で、別姓を希望する人のために選択肢を広げたものであり、憲法の定める「個人の尊重」「両性の平等」という理念にこたえるものです。
Q:導入に反対している人たちの理由は何?
A:反対派や慎重派の人たちの意見を要約すると、「同じ姓を名乗るという慣習が、夫婦・親子・兄弟などの絆(きずな)を強めている」「夫婦別姓が導入されれば、家族制度が揺らぎかねない」などというものです。しかし、「選択的夫婦別姓」は、すべての夫婦に別姓を強制するものではありません。希望する夫婦に別姓への選択を認めようとするものなのです。反対派の意見は“選択制”であるという点に目をふさいだ議論というほかありません。
法制審が夫婦の姓について見直し作業を始めて既に10年が経過しました。21世紀、新しい共生社会を構築していくためには、すべての人々を画一的な枠に押し込めるのではなく、個人の多様な生き方を認め合う許容度の広い法制度の整備が望まれます。ましてや、これからの時代は女性が能力を発揮できる環境を整備し、女性の社会参加を積極的に推進していく時代であり、婚姻によって必ず夫婦同姓となるこれまでの制度の在り方を見直し、選択的夫婦別姓制度を導入すべきときが来ていると言えます。別姓を希望する人がいるならば、選択肢を広げていくのが政治の責任ではないでしょうか。
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