過去最悪のペースで被害が増えている振り込め詐欺に関し警視庁は、来月からの2カ月を特別緊急対策期間として、現金自動預け払い機(ATM)周辺に機動隊員を重点配置するなどの対策に乗り出す。一方、6月に施行された振り込め詐欺救済法に基づき、違法行為に使われ、凍結された銀行口座の残金を被害者に返還する手続きがスタート。詐欺の“道具”として欠かせない携帯電話の規制も進んでいる。
警察庁の調べによると、全国の振り込め詐欺による被害額は、今年5月までに約137億円と、前年同時期の1・6倍に達し、過去最悪だった2004年を上回るペースだという。こうした中、6月に施行された振り込め詐欺救済法は、被害者に対して被害金を裁判を経ずに迅速に返還するもので、自民、公明両党の議員立法で衆院に提出され、昨年12月に全会一致で可決・成立した。
被害金返還までの流れはこうだ。
まず金融機関は、犯罪に利用されている恐れのある預金口座を発見したら、直ちに口座を凍結。預金者保護を目的とする預金保険機構のホームページ(HP)に、口座名義人の権利を失わせる公告を掲載する(60日以上)。次に同機構は、HPでこの口座に残った資金を分配することを30日以上公告。被害者は金融機関に対し資金の分配を申請するが、その際、被害に遭ったことや振り込んだことを示す資料などが必要だ。これを受けて金融機関は、被害者に対し資金を案分して分配する。
振り込め詐欺の被害者の多くは高齢者で、インターネットが苦手な人も多いことから、各金融機関ではホットラインを設置し、電話で振り込め詐欺被害の照会も受け付ける。これらの手続きにより、最短でも3カ月程度で被害者のもとにお金が戻ることになる。
預金保険機構では、先月16日から口座名義人の権利を失わせる1回目の公告を行っており、早ければ来月中旬から口座に残った資金を分配する公告が始まる。
ただ、口座の残高が1000円未満の場合、同法では返還の対象とはならない。また、口座残高が返還金額の上限になるため、被害者に被害額全額が戻らない場合もある。
一方、振り込め詐欺の犯行と密接な関係があるとされてきた携帯電話の不正利用を防止する法律の改正案も今年6月に成立し、取り締まりが一層強化された。これは自民、公明両党の与党振り込め詐欺撲滅プロジェクトチーム(PT)がとりまとめたもの。
今回の改正では、携帯電話の番号を特定するための固有のID番号が記録されたカード(SIMカード)も、携帯電話本体と同等とみなし、無断譲渡を禁止。また、犯行の4分の1以上を占めるとされるレンタル携帯電話について、レンタル業者に対し本人確認義務を厳格化した。
具体的には、携帯電話のレンタル業者は貸与契約を結ぶ際、相手方から運転免許証の提示などの方法で、氏名・住所といった本人確認を経ずに貸与してはならないとした。さらに業者に対し、(1)貸与者の確認記録の作成(2)貸与契約の終了日から3年間、同記録の保存を義務付け――を課し、違反した場合は2年以下の懲役または300万円以下の罰金とする罰則も盛り込んだ。
与党PT副座長で、公明党の石井啓一衆院議員は、「振り込め詐欺を規制する施策を講じても、次々に新手の手口が出てくる現状だ。被害者の多くは高齢者であり、未然に防ぐために情報を周知徹底しなければならない。今後も公明党は、被害防止へ全力で取り組む」と語っている。
<公明新聞2008年8月15日付>