一、はじめに
〇 結婚、出産をする、しないは本人の意思に委ねられ、選択肢の一つに過ぎない時代になっています。しかし、労働環境や育児費用の増大などから「やむを得ない選択」をしている場合も多いと考えられます。
〇 公明党は、個人の意思を尊重することに十分な配慮を払いながら、子どもを産みたいと主張する人々に積極的に機会を与え保障することが重要と考えます。
また、「子どもの幸せ」や「子育ての安心」が確保される社会こそ、国民すべてにやさしい社会であるとの考え方に立ち、子育てを社会の中心軸に位置づけ、社会全体で支援する「チャイルドファースト」(子ども優先)社会の構築を目指します。
二、少子対策の考え方
〇 出生率低下の最大の原因は晩婚化、非婚化であることが調査、研究で明らかになっています。その根底には働き方の問題があり、パートや派遣業など不安定で低所得の雇用が、晩婚化、非婚化につながっていると考えられます。
〇 現在、わが国の労働市場は「労働時間が短く賃金が低い雇用機会」と「労働時間が長く、賃金が高い雇用機会」に二極化されており、このことが長時間労働が困難な女性や高齢者の働く場を制約し、一方で、画一的長時間労働への拘束に耐えられない若者たちがフリーターや無業者となるケースを増やしています。
〇 働き方の見直しが急務であり、具体的に、(1)所定外労働の抑制(2)労働時間規制にとらわれない働き方(3)処遇の均衡確保――の3点は避けて通れない課題です。
〇 私たちの政策は、結婚できる雇用環境の整備や子どもを産み育てるための良質な住宅の提供など「子どもたちの生まれ出ようとする環境への支援」と、児童手当などの「生まれ出た子どもたちに対する支援」に要約されます。
〇 生まれ出る子どもはすべて平等であるという立場から、民法を改正し、婚外子も等しく育成されるようにすべきと考えます。
〇 仕事と子育ての両立をはじめ、男女共同参画社会の遅れが少子対策の遅れに連結しているものと考えられ、早急な是正が必要です。
〇 政策立案には目標を設定することも重要であり、政策努力の積み重ねとして、2015年に合計特殊出生率1・50を目指すことを提案します。3年ごとに検証し、政策の見直しと追加を行います。
一、地域格差と地方分権
〇 少子化にも地域間格差があります。夫婦共働きしている地域の方が子どもが多く、夫だけの片働きの多い地域の方が少ないというデータもあります。共働き家庭が多く比較的出生率の高い東北地方や北陸地方では、女性が働きやすい環境が存在するものと思われます。すなわち、両親が同居もしくは近居していることが多く、子ども(孫)の世話をしてもらいやすい状況にあると推測されます。
〇 一方、都市部の核家族世帯では、保育所の充実は地方県よりも進んでいたとしても、また経済的には恵まれていたとしても、多くの場合、妻一人で子育ての負担に耐えなければならない状況があります。
〇 出生率の地域格差は簡単に説明できるものではなく、幾つもの条件が重なり合った結果であり、それぞれの地域要因を解明することが必要です。
〇 少子高齢化が地方を襲い、人口減少が急激に進むところまで進展しますと、自治体が国からの支援を待つ姿勢である限り、回復は不可能です。今後は、さらに地方分権を進め、権限と一定の財源を保つことによって、自立の道を自ら切り開くことがもっとも効果的な方法であると考えられます。
二、国と地方の役割分担
〇 地方分権が叫ばれ、財源の地方への移譲が進んでいますが、少子対策は国としてどこまで責任を持ち、どこから地方に委ねるべきかについて議論を整理する必要があります。
〇 少子対策として、「生活を犠牲にしない働き方」と「子育ての負担を過重にしない支え方」の二つに要約しますと、「働き方」の分野は国が責任を持ってリードすべき問題であり、「支え方」の方は国としての責任もありますが、むしろ地方の考え方を積極的に取り入れていく分野であるということができます。
〇 地方分権の推進により、自治体間の競争の時代が到来したことから、経済的な側面の競争と同時に、いかに住みやすい地域をつくるか、子育てのしやすい地域をつくるかということが大事な側面の一つとなります。
〇 子育てのためにかかる手間暇が、かつては大家族の中で、隣近所の助け合いの中で、比較的分散されてきましたが、最近は両親だけに、時には母親だけに集中する状況になっています。子育てが過重になる、あるいは過重に感じる人が多くなったのは、核家族化という時代の流れによりますが、加えて女性も働く時代を迎えたからです。
〇 女性に対して、過重感を取り除く対策は、雇用制度の改革など国による一元的な施策で対応すべき領域もありますが、同時に地域ごとの特性に見合った施策の導入も重要です。
〇 地方における3世代同居は働きながら子育てをする女性の負担を軽減していることは事実で、両親の同居や近居は一つの望ましい選択肢ではありますが、都市部では必ずしもそれが叶えられるわけでありません。そうした地域特性から、都市部ではファミリー・サポート・センターの整備や、子育て支援のNPOなど民間レベルで相互協力を図るシステムが構築されていますが、このような共助のシステムは地域の特性を踏まえ、地域からつくり出していく必要があります。
〇 いずれにせよ、少子社会への対応は、国と自治体をはじめ地域を支えるあらゆる人々が両輪となって、相互に意見交換しながら進めていくことが重要です。
一、生活を犠牲にしない働き方=ワーク・ライフ・バランスの回復を
人口減少社会の中で女性の就労率は今後も高まっていくことが想定されており、仕事を継続しながら妊娠・出産に困難を感じることがない働き方や、さらに男性・女性が共に働きながら子育てを共に担っていくライフスタイルの確立が求められています。具体的に、(1)子育てと仕事を両立させるという観点から育児休業制度の問題(2)女性や若者の就労形態と関連して正規雇用者と非正規雇用者の問題、さらに正規雇用者の長時間労働の問題、そして最後に(3)今後の働き方としてワーク・ライフ・バランスを重視することと同時に企業の競争力――について検討し、いくつかの政策提案をいたします。
(1)育児休業制度
〇 育児休業制度が働く女性の妊娠や出産に大きな影響を与えていることが調査データでも明らかになっており、その拡大に向け、取り組みを進める必要があります。
〇 現在でも大多数の女性が結婚、妊娠あるいは出産を契機に退職し、その後、7割から8割は第1子出産後無職になっています。このことは裏返して言えば家族を支える経済力が男性にないと家族の形成も困難になることがうかがえます。
〇 勤務時間の柔軟な調整や休業の断続的な取得など子どもの都合に合わせた柔軟性に欠けることや、小規模な事業所では相対的に取得率が低く利用の拡大のためには代替要員の確保などが必要なこと、さらには、非正規社員へのさらなる適用拡大など、制度自体の改善が必要です。
(2)正規雇用者と非正規雇用者・長時間労働の課題
○ 近年の雇用における様々な規制緩和は、一方で派遣社員など非正規雇用者を増やすとともに、正規雇用者の長時間労働、特に30代を中心とする中堅・若手社員の長時間労働をもたらしていると指摘されています。男性・女性が共に子育てを担っていくためには、こうした非正規の不安定な雇用から安定した雇用への転換を促すとともに長時間労働が是正されることが喫緊の課題です。
〇 非正規社員と正規社員との格差を縮小する改革を進めるべきであり、こうした働き方の二分化のもとではオランダのコンビネーション・シナリオのように、夫婦共働きをすることにより家族形成を容易にするという選択肢も同時に重要です。
〇 コンビネーション・シナリオを現実の選択肢とするためには、業務内容の幅広い明確化を促すとともに、サービス業など比較的業務内容が明確な分野から「同一労働・同一賃金」の均等処遇の原則の導入を実現すべきです。
(3)ワーク・ライフ・バランスと企業の競争力
〇 生活と仕事の両立を図るための働き方の改革が企業の生産性を低下させ競争力を削ぎかねないという指摘もあります。しかし、両立支援の先進的な取り組みをしている企業で順調に業績を伸ばしている事例は多数あり、こうした企業ではむしろ育休取得や職場復帰支援などにより就業意欲を高め労働生産性の向上を図っています。
〇 長時間労働や非正規化によって生産性を維持する在り方を見直し、仕事と子育てが両立する雇用環境を生み出すため、より柔軟な発想で企業経営を進め、生産性の高い労働を実現させることに将来の可能性を見いだすべきと考えます。
【トータルプランの提案】
〇 「仕事と生活の調和推進基本法」(仮称)を制定し、国をあげて企業と国民が一体となって「働き方改革」を推し進めます。また、次世代育成支援対策推進法に基づき企業が策定した「一般事業主行動計画」の公表を義務づけます。
〇 育児休業制度の給付水準の引き上げや分割取得など柔軟性の高い制度へと改革します。また、育児休業中の保険料免除措置を拡大し産休期間にも適用します。
〇 正規短時間労働の位置づけを明確にして、賃金や社会保障の格差を無くします。夫婦で1・5人分働くオランダ方式の導入も検討します。
〇 長時間外労働の是正のために、時間外労働の割増率を4割(休日5割)に引き上げ、中小企業に対しては助成金、税制などにより優遇措置も検討します。
〇 一定の年数雇用を継続した場合には正規雇用への移行を義務づけます。契約期間が限定された社員が多い場合には雇用保険料率を引き上げます。
二、若者の自立の支援
今日の少子化の原因については様々な指摘がなされていますが、その一つとしてニートやフリーターなど若者の雇用の問題が指摘されています。安定した就労機会が限られていることが家族形成を妨げ、結果として未婚化を促進しているという指摘です。若者の就労の問題は少子化に関連して課題となるだけでなく、将来の社会保障制度の在り方についても大きな影響を与えるものであり積極的な対策が必要です。具体的に、(1)若者の雇用問題、続いて(2)キャリア教育の在り方、さらに(3)就労のみにとらわれない「包括的な若者施策」の重要性――について検討します。
(1)若者の雇用問題
〇 バブル崩壊後の団塊ジュニア以降の世代は正社員としての雇用機会の制約から非正規労働者が3割にも達し、失業率も他の世代に比較して高い水準にとどまり続けています。
〇 働く意欲の問題など内面の問題も指摘されますが、それ以上に、終身雇用を前提とした日本型雇用慣行の変化や、産業構造の変化と技術革新による人材要件の変化など、複合的な要因が若年雇用問題の背景に存在すると考えられます。
〇 常用雇用の縮小により正社員としての就労の機会が奪われたことが不安定な就労を余儀なくされてきた大きな原因であり、長期不況からようやく脱しつつある現在、2007年問題の存在も踏まえ、若年世代の働き方の問題に真正面から向き合い、安定した就労を確保するための再挑戦の機会を創出することが重要です。
(2)キャリア教育
〇 近年、学校から「就職」という形でスムーズに職業生活に入っていない人の比率が急増しています。
〇 これは前述の学卒労働市場の変化、雇用慣行の変化とともに、学校教育を就労と結びつけるキャリア教育がこうした変化に十分に対応できていないという指摘もあり、インターンシップの拡大など、さらなる実効性ある取り組みが重要です。
(3)包括的若者施策
○ 若者の就労支援施策の重要性は先進諸国で共通の課題です。若者の安定した就労と積極的な社会参加こそが次世代形成の土台であって、教育制度の在り方の抜本的な見直しを含めて包括的な取り組みを進めるべきです。
【トータルプランの提案】
○ 一定の年数雇用を継続した場合には正規雇用への移行を義務づけます。契約期間が限定された社員が多い場合には雇用保険料率を引き上げます。(再掲)
○ キャリア教育の在り方を抜本的に見直し、より早期からの取り組みを進めるため職業体験学習などの取り組みの初等教育での位置づけや中等・高等教育におけるキャリア教育カリキュラムの見直し、雇用行政と教育行政の連携の強化、イギリスにおけるコネクションズ政策にならった継続的な支援策やドロップアウトを予防する体制の創設に向けた検討を進めます。
○ 日本版デュアルシステムの導入など教育・職業訓練の一体的推進により再挑戦の機会を大幅に拡充します。また被用者としての働き方の選択のみでなく起業支援など多様な挑戦の機会を提供します。
○ 小学校・中学校・高等学校がそれぞれのレベルで地域と密接に連携しながら、各学校での進路指導に関して、OBを含む企業人をキャリアカウンセラーとして配置し、社会経験の豊富な人材を活用した指導体制の充実を図ります。(4面に続く)
三、子育ての総合的な支援
子育ての様々な負担が、子どもを持つことに対する躊躇を生み出しているという指摘があります。過重な負担感を生み出す理由として、(1)仕事と子育ての両立(2)子育ての経済的負担(3)子育ての心理的・肉体的負担││が指摘されています。仕事と子育ての両立について、雇用制度の面については前述のとおりですが、ここでは(1)子育ての負担とその軽減(2)男性の役割・地域の役割(3)保育の在り方││について検討します。
(1)子育ての負担とその軽減
○ 子育ての経済的負担については、(1)妊娠出産にかかる負担(2)保育・就学前教育にかかる負担(3)医療にかかる負担(4)義務教育外の教育にかかる負担(5)高等教育にかかる負担││に大別されます。
○ 個別の支援については、(1)税制上の支援(扶養控除・特定扶養控除)(2)児童手当と児童扶養手当(3)出産育児一時金(医療保険より)(4)公的負担による妊産婦健診(5)保育料の助成制度(保育所運営費)と幼稚園の就園奨励費制度(6)乳幼児の医療保険給付率の割り増し措置と、自治体負担による自己負担分の助成制度(7)奨学金制度││などが存在します。
○ 社会保障給付費の中で児童・家族関係の給付費は、平成15年度で3兆1626億円に上りますが、社会保障給付費全体の84兆2668億円に占める比率は3・8%と、高齢者関係給付の70・4%に比較するとはるかに低い水準にとどまっています。
○ このような家族分野への支出の社会支出に占める割合は3・43%で、アメリカの2・53%に比較すれば高いものの、イギリスの9・97%やフランスの9・86%など西欧諸国に比較するとはるかに低い水準にとどまり、GDPに占める比率はわずか0・6%でOECD諸国の中では26位と、最低に近い水準に位置づけられています。
○ 子育ての総合的な支援を考えるに当たって「子育ての基本的な経済的負担は社会全体でこれを支え、出産・子育てで個々人に過大な追加的負担を求めない」という原則を確立すべきです。
○ 必要な財源の確保については、国民の理解と納得が前提ですが、基本的に、税財源、もしくは社会保険財源の二つの選択肢があります。
○ まず、育児保険制度の創設を正式に検討課題として取り上げ、年金、医療、介護、雇用、労災など各保険制度からの支援強化も次善の策として検討します。財源がさらに必要な時には、税制からの支援を検討します。子育てはできる限り国民全体で支えることが重要であり、広く薄く負担をする消費税の導入についても理解を求め、その前提として税と保険料による国民負担率を明らかにします。
○ 出生率の低下する原因の一つに、教育費負担の大きさが挙げられ、特に就学前教育と高等教育において、私費負担の割合が高くなっています。奨学金制度のさらなる拡充など、負担の軽減が必要です。
(2)男性の役割・地域の役割
○ 子育ての心理的、肉体的な負担については、3世代家族の減少など家族の小規模化、地域社会の相互協力の希薄化、さらに子育てにおいて男性が十分な役割分担を果たしていないことなどがその理由として挙げられ、経済的な負担の軽減と同時に、子育てにおける男性の役割や地域社会の役割を強化することが重要です。
(3)保育の在り方
○ 児童福祉法の39条には「保育所は、日日保護者の委託を受けて、保育に欠けるその乳児又は幼児を保育することを目的とする施設とする」とあり、仕事をしていない専業主婦の場合、保育所に子どもを預けることができないことが問題となっています。
○ 公明党は、児童福祉法を改正し「保育に欠ける」という部分を見直し、いかなる家庭の子どもであっても利用できる制度にすべきであると考えます。
○ 保育所と幼稚園については、地方からはそれぞれの施設が別々では子ども集団が小規模化し、それぞれの運営が非効率になることや、都市部では親の就労の有無で利用施設が限定されることなどを理由に、統合を求める意見が多く寄せられ、その期待に応えることが必要です。
○ 平成18年10月から、この両者の機能を併せ持つ「認定こども園」が正式にスタートすることになり、ゼロ歳児から就業前までの児童すべてが対象となり、保育に欠ける子も欠けない子も受け入れ、子育て不安に対応した相談や親子の集いの場を提供することになります。
○ 放課後児童の対策についても、厚生労働省の放課後児童クラブと文部科学省の地域子ども教室がありますが、これについても両省の事業を一体化して、小学校6年生まで預かることができるようにすべきです。幼稚園、保育所と同様に、「放課後子どもルーム」(仮称)の設置を強く求めていきます。
【トータルプランの提案】
○ 児童手当については、18歳までを対象とし、給付水準を倍増するため、財源の確保に努めます。当面、低年齢層から実施するなど段階的な取り組みを進めます。所得制限は廃止します。
○ 妊娠・出産にかかる保健医療サービスについては、出産育児一時金制度の拡大による負担軽減をさらに進める観点から、当面受領委任払い制度の創設により窓口負担を軽減し、保険の適用に向け早急に検討を進めます。
また、妊産婦健診にかかる公費助成を拡大するとともに、不妊治療については、一年度当たり10万円の助成限度額を倍増するなどさらなる負担軽減策を実施します。
○ 財源としては、育児保険制度の創設を正式に検討課題として取り上げます。年金、医療、介護、雇用、労災など各保険制度からの支援強化も次善の策として検討します。
財源がさらに必要な時には、税制からの支援を検討します。子育てはできる限り国民全体で支えることが重要であり、広く薄く負担をする消費税の導入についても理解を求め、その前提として税と保険料による国民負担率を明らかにします。
○ 児童福祉法を改正し、「保育に欠ける」という部分を見直し、いかなる家庭の子どもであっても利用できる制度にします。認定こども園を一層拡充し、待機児童ゼロ作戦をさらに強化いたします。
○ 認可保育所、無認可保育所、また幼稚園など保育・教育にかかわるサービスの利用者負担について、公私の格差、認可無認可の格差、保育教育の格差の解消に取り組みます。
○ 放課後児童クラブ、地域子ども教室を一体化して小学校6年生まで預かるようにします。「放課後子どもルーム」(仮称)として再出発することを政府に求めます。
四、教育
○ 教育にかかる費用・経済的負担が子どもを産むことに対して抑制的に作用するという指摘があり、一方では社会的自立を促すことや家族を形成すること、また子育てについてよりポジティブな意識を形成することについて、現在の教育が積極的な役割を果たし得ていないという指摘があります。
○ 近年、人間力の育成ということが指摘されていますが、社会的自立や家庭についてその意義を伝えることは教育の役割の重要な側面と考え、必要な対策を講じるべきと考えます。
【トータルプランの提案】
○ 就学以前の幼児教育についてその重要性を再認識し、教育と保育の一体的推進と、その普遍的な提供を実現するため、利用料の無料化も視野に入れ、費用負担の在り方についての検討を進めます。
○ 子どもが身につける人間としての基本的な資質(自制心、コミュニケーション能力、あいさつのマナーなど)を含め、幼児教育および保育の内容を整理・再検討するとともに、家庭教育との連携を図りつつ幼児教育の充実を図ります。
○ 高等教育の家庭負担が増大しており、奨学金を一層受けやすくするとともに、利息の上限を抑制し利子補給を行います。また、奨学金制度の拡充の一環として、新たな「給付型奨学金」を創設します。
五、住宅、都市政策の在り方
○ 戦後、地方より都市への大規模な人口移動により形成された現在の都市の在り方や住宅の在り方について、改めて子どもの視点や子育ての支援から再検討を進めるべきと考えます。
○ 様々な地域で所得が比較的低い新婚家庭の家賃補助制度の創設など、若者の家族形成を支援する施策が必要と考えます。
○ 人口減少社会に入り、都市部での人口の高齢化と地方での人口減少が同時に進むことと予想され、こうした変化を利用し、より積極的に対応することにより、子育てにとって良質な居住環境を都市部でつくり出す機会が可能ではないかと考えます。
○ 近年の子どもを対象とする犯罪の多発により都市・地方を通じて子どもの安全をどのように守るのかということも重要な課題となっています。
○ 公共交通機関や公共施設等の子ども連れによる利用について近年バリアフリー化の推進等により改善がなされてきましたが、いまだに子育て家族にとって様々な不便を感じることが多いことも事実であり改善が必要です。
【トータルプランの提案】
○ 新婚家庭の家賃補助制度や若者の家族形成を支援し、働きながら子育てができるように良質な居住環境をつくります。そのため、「ネスト(巣作り)プラン」を策定するよう政府に実施を求めます。
○ 仕事と子育ての両立という視点からは、3世代が同居できる住宅の確保を促すため、相続税の在り方や税制上の支援など支援策の拡充を検討します。
六、その他
(1)母子家庭等への支援
(2)小児医療の充実
(3)子どもの安全の確保
(4)児童虐待防止対策の強化
(5)障害児への支援
【トータルプランの提案】
○ 母子家庭の経済状況を改善するため、300人以上の企業に一定の雇用率を義務付けることやキャリア形成施策の拡充など母親の就労支援策を強化します。また、養育費の確保について、行政による代理徴収制度の創設を検討します。
○ 小児医療の体制整備、とりわけ救急医療体制の整備のため、「小児医療再生アクションプラン」(仮称)を策定します。
○ 子どもの安全を確保するため、(1)学校の安全(2)放課後・通学路の安全(3)地域・家庭での安全││といった様々なレベルでの安全強化を包括的に進める「子ども安全アクションプラン」(仮称)を策定します。
○ 発達障害等の早期発見・早期療育など障害児に対する一貫した支援の充実、児童虐待防止のための保健師の全家庭の訪問活動の実施など、多様な支援を必要とする家庭への体制整備を進めます。
一、歴史に残る「2005年」の意義
○ 統計上で日本の人口が減少したのは第2次大戦の影響を除けば2005年がはじめてですが、問題は05年以降、様々な社会的変化が予測されることです。
○ 第1は労働力人口の減少です。労働力人口の減少は国内総生産(GDP)にも大きな影響を与えることになり、国は、中高年者、女性、若年者の就業環境の改善を急ぐ必要があります。
○ 第2に、外国人労働者の問題です。2015年ぐらいまでは何とか国内の労働力人口を増加させることや生産性の向上で維持できると思われますが、それ以降は外国人労働者の導入が大きな政治的課題になると予想されます。外国人労働者の生活や労働環境の整備だけでなく、放置されている子どもたちの教育環境なども含め、総合的な検討が必要です。
二、労働生産性の向上を目指して
○ 労働力人口を確保することが労働生産性を高めるために欠かせない要件ですが、特に女性を中心とした労働力確保が重要であり、そのためには仕事と子育てを両立する社会を構築することが重要です。
○ 間もなく定年を迎える、いわゆる団塊の世代は、戦後の日本を支えてきた「ものづくり世代」であり、世界に誇る高い知識や技術力を持った人たちです。「達人集団」と呼ぶ人もあり、こうした高齢者の活躍の場を提供することも重要です。
○ 研究開発、技術進歩の遅れが90年代の生産性低迷の原因として挙げられており、今後の日本にとって力点を置かなければならない分野です。技術進歩には人材が必要であり、研究者や技術者を養成するために必要な財源の確保が重要です。
三、都市と地方の格差
○ 人口減少社会は全国一律に起こるわけではありません。都市県はまだ人口減少が緩やかではありますが、地方県は一層の高齢化と急激な人口減少の中で、あらゆる産業や社会面でも想像以上の影響が及ぶものと考えられます。
○ 地方においては、企業進出や企業の拡大を行うにしても、質の高い労働力や技術的な集積性を求めることが困難になり、地域経済の衰退は避けて通れません。
こうした状況下で、居住地を点在させたままにしておくのか、それとも居住地を集積させるのか、検討が必要です。産業政策についても、労働集約型の企業は不可能であり、在宅で仕事ができるテレワーカーを増やし、SOHOなど小人数で仕事のできる事業を育成することも必要です。
最終的には個人の意思に委ねなければなりませんが、地方都市およびその周辺に居住地を集合させ、雇用や安心、安全のために転居をしてもらうことも選択肢の一つです。居住地域の集積は企業の誘致にも有利であり、雇用の創出にも役立ち、若年層の定住化にも貢献するものと思われます。
○ 都市部の問題として、大都市およびその周辺に住む団塊の世代が定年退職し、高齢化率が高くなること、しかも核家族化が今後も継続することがあります。高齢化対策の予算を増加するだけでなく、医療や介護施設の拡充も必要です。高齢者にとっても地域社会にどのように溶け込んでいくのかが問題であり、「会社」から「社会」へどう転換できるか、また、地域での連携を子育てにどう結びつけることができるか、具体策が求められます。
四、社会保障と世代間格差
○ 高齢社会が到来し、労働力人口が減少した時、財政的な危機に直面するのは社会保障制度です。2015年ぐらいまでは、女性や若年者の雇用環境の整備によって、労働生産性を高めることができるかもしれませんが、生産年齢人口が1200万人以上減少する2020年以降は、労働力人口の拡大にも限界があります。
○ その際、保険料率の引き上げ、公費負担の増額を行うか、サービス給付を制限するかの選択を迫られることになります。現役世代の人数が減少し高齢者数が増加するため、現役世代の負担が増え、世代間格差が生じます。
○ 医療保険制度は、自己負担が既に3割に達しており、これ以上自己負担を増やすことは保険としての意味が薄れ、保険料の引き上げも10%が限界と考えられますから、追加的に2%ぐらいしか上げられないことになります。
国民皆保険制度を守るためには、生活習慣病の予防や早期治療による重症化防止を徹底するとともに、ベッド数や入院期間を抑制して医療費の無駄を省き、医療費総額を抑制する必要があります。そのためには、それぞれの地域でグループホームやケアハウスなど、多様な受け皿づくりを進める必要があります。
○ 介護保険制度においては、保険料負担年齢の引き下げは避けて通れないところであり、医療費抑制で浮いた財源の一部を介護に回すなど、医療と介護をトータルで見て、財源を効率的に使用して増加の抑制に努めなければなりません。
○ 年金については100年間の負担と給付が計算済みであり、2050年に合計特殊出生率1・39以上への回復を前提にしていますが、これは現実的に可能な数値です。問題があるとすれば年率1・1%以上の経済成長率が達成されるかどうかであり、労働力人口減少の中で労働生産性をどこまで上げることができるかにかかっています。
○ 社会保障制度は支える若年者の割合が高まれば問題は解決されます。もし、仮に外国人労働者を多数採用することを決断するのであれば、日本人の出生率が低くても、年金や医療の財政は改善され、問題は緩和されます。しかし、その時には外国人労働者が多数存在することによって発生する様々な問題について、社会がどこまで認めることができるかどうかが問われます。
○ その他、障害者問題や生活保護問題などがありますが、高齢化率の上昇とともに負担が重くなることは必至で、老若男女を問わず総力で支え合う以外にありません。
五、人口減少のプラス面
○ これまで述べてきたことは、人口減少が社会に与えるマイナス面を中心にした対策ですが、人口減少下ではプラス要素も存在します。
○ 日本にはこれから伸びるロボット分野やバイオ部門などがあり、DNA分析なども控えています。労働人口が減少しても、人間に代わるロボットがものづくりなどに参入すれば、先端的な製品を多品種で少量ずつ作り上げることができます。高齢者が労働力として参加する場合でも、人間工学の発達で人と機械の二人三脚で生産性を上げることもできます。
○ ロボットが技術労働者の代わりに働き労働生産性が上がれば、経済には好影響を与えます。少なくとも人の労働時間を短縮し、子育ての時間など生活にゆとりを与えるような社会構造の設計が期待できます。しかし、ロボットは生産はしても消費をしてくれませんから、製品を国内で多く売却することはできず、海外に輸出しない限り問題は残ります。
○ このほか、人口減少社会では、食糧、資源、エネルギーの消費が緩和され、環境の悪化にも歯止めがかかります。食糧の自給自立体制が現在よりも向上し、教育も一人ひとりに見合った内容にするゆとりが生まれます。江戸中期に文化の華が開いたように、社会にゆとりが生まれ、元気な高齢者を中心に文化の華が咲き薫ることも考えられます。
○ 人口減少社会がプラス面をもつことは事実ですが、永久にプラス面が継続するという意味ではなく、人口減少が経過する一時期において、ゆとりを取り戻す時があると理解すべきでしょう。トータルな人間社会を考える時、不安なく希望をもって生活を持続するには、子どもたちの歌声が何よりも必要です。子育ては人生最大の事業であり、この事業なくして将来の幸せはありません。