
政府は20日昼、首相官邸で安全保障会議を開きイラク南部サマワに派遣している陸上自衛隊の撤収を正式決定。同会議終了後、小泉純一郎首相が記者会見で撤収決定を発表するとともに、額賀福志郎防衛庁長官が撤収命令を発出しました。これに先立ち、小泉首相と公明党の神崎武法代表は同日午前、首相官邸で与党党首会談を行い小泉首相は、陸自撤収の意向を表明。神崎代表はこれを了承しました。引き続き首相官邸で開かれた、政府と自民、公明の与党両党の連絡会議でも撤収方針が了承されました。現地部隊は直ちに撤収作業に入り、約1カ月半かけて順次クウェートに引き揚げた上で、帰国する予定。政府はクウェートを拠点とする航空自衛隊の輸送活動は継続する方針です。
党首会談の席上、小泉首相は、イラク南部サマワに派遣している陸上自衛隊の撤収を決めたことについて、「(サマワを県都とする)ムサンナ県の治安権限が7月に多国籍軍からイラク政府(治安当局)に移譲される。米軍、英豪軍など多国籍軍とも協議し、日本は撤収することにした」と説明。「一発の弾丸も撃たず、一人の負傷者も出さず(活動を)終えることができ、大変にうれしく思う。献身的な自衛隊員の活動に心から感謝している」と述べました。
その上で、「陸自の撤収後も、イラクへの支援活動は引き続き行っていく」と強調。クウェートを拠点に輸送活動を行っている航空自衛隊について、「アナン国連事務総長からも(国連人員・貨物の空輸支援の)要請があり、国連職員の輸送などに携わることになる」と述べ、空自の輸送活動を継続する方針を明らかにしました。
神崎代表は、陸自の撤収について、「人道復興支援活動は(その目的を)ほぼ達成できた。基本的に了解する」と表明。空自部隊の活動継続については、「先般、国連のアナン事務総長から直接、要請を受けたが、食料品、医薬品、国連職員などを輸送することは極めて重要であり、協力の必要がある。(活動継続を)理解する」と述べました。
その上で、(1)撤収する陸自隊員と、輸送活動を継続する空自隊員の安全確保に万全を期す(2)政府開発援助(ODA)による生活基盤整備と雇用創出支援の継続(3)国連との連携によるメソポタミア湿原の再生事業の着手――などを要望し、最大限努力するよう求めました。
政府は、04年1月、イラク人道復興支援特別措置法に基づき、陸上自衛隊の部隊をイラク南部ムサンナ県サマワに派遣。約2年半にわたり、イラク人自身による国の復興・再建を支援するため、医療、給水、学校・道路などの公共施設の改修など復興支援活動を実施してきました。
陸自の復興支援活動は、ODAによる資金援助と相まって、新生児死亡率が02年上半期に比べて約3分の1に減少(サマワ母子病院)するなど医療環境の改善や、一日最大6000人、延べ約156万人の雇用創出、給水事情・教育環境の改善などで大きな成果を挙げた。日本の支援に対して、イラク政府および現地の人々から高い評価と信頼が寄せられています。
【隊員の安全確保に万全期せ――神崎代表が談話】
公明党の神崎武法代表は20日、政府がイラク南部サマワから陸上自衛隊を撤収させることを決定したことについて、次のような談話を発表しました。
一、本日(6月20日)政府は、イラク支援特別措置法に基づきイラクのサマワにおいて、約2年半にわたり人道復興支援活動に当たってきた陸上自衛隊について、撤収させることを決定したが、わが党も、かねてから政治プロセスの進展や治安状況を見極めながら、できるだけ早期の撤収を主張してきたところであり、今回の政府の決断を歓迎する。公明党は次の理由から、この政府の決定を了承した。
一、第1は、ムサンナ県において、約2年半に及ぶ医療、給水、学校・道路等公共施設の改修など多岐にわたる陸自部隊の活動とわが国ODAによる支援により、現地の生活基盤の整備、雇用の創出など目に見える成果を収め、一定の目的を達成したと判断した点である。
一、第2は、イラクの政治プロセスは着実に進展し、先般、新政府が発足し、民主的な政府の下でイラク人自身による自立的な復興に向けて本格的な歩みが始まり、かつ、わが国の陸上自衛隊が活動しているムサンナ県の治安権限が多国籍軍から地元イラク警察に移譲された点である。
一、陸自部隊については「撤収」することを決定したが、空自部隊については、国連及び多国籍軍への支援を行うため活動を継続し、新たにバグダッドやエルビルへの空輸を行うことを決定した。
この点については、先般、私が国連のアナン事務総長から、直接要請を受けており、わが党としても、水、食糧、医薬品及び国連職員等の輸送等が円滑に行えるよう協力することは重要であると認識しており、理解を示したところである。
一、なお私は、政府方針の決定前に行われた小泉総理との党首会談において、陸自部隊の撤収と空自部隊の活動の継続およびバグダッドなど新たな地への空輸について、隊員の安全確保に関して、万全を期していただきたい旨を強く要請した。
また、わが国がイラクの復興支援を引き続きサポートするために、ODAによる支援はもとより、国連と連携を図りつつ、メソポタミア湿原の再生事業の促進に協力するなど、幅広い形で復興支援活動が継続できるよう最大限の努力を行ってほしい旨を要請したところである。
一、わが国の自衛隊の活動は、イラク政府からも住民からも、そして国際社会からも高い評価と信頼を受け、感謝のうちに「撤収」することができることは大変に喜ばしいことである。
これもひとえに自衛隊の皆さまが厳しい環境のもとで、懸命に活躍してくれたおかげであり、心からの敬意と感謝を表明したい。