長寿医療制度決 Q&A

 長寿医療制度(後期高齢者医療制度)への理解が徐々に広がっています。6月12日に政府・与党が決定した改善策を受け、改めて長寿医療制度をQ&A形式で解説します。
(2008年7月1日付 公明新聞)

【問い】 なぜ75歳以上が対象なの?
膨らむ医療費を皆で支えるため

 日本テレビの6月定例世論調査<円グラフ参照>で、「長寿医療制度を見直して続ける」のと「廃止する」のと、どちらを支持するかを聞いたところ、55・7%が「見直し」を支持する結果が出るなど、75歳以上の高齢者の医療費を国民全体で支える同制度への理解が一段と進んでいます。



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 75歳以上の高齢者の1人当たりの医療費は、65歳未満に比べると約5倍かかっています。75歳以上の人口は現在、約1300万人ですが、2025年には約2200万人になり、国民医療費は約33兆円(05年度)から56兆円に増え、その半分近くを75歳以上の高齢者の医療費が占めると推計されています。

 75歳で制度を区切ることについて、日本経済新聞(6月13日付)は「野党や一部メディアから『うば捨て山』『家族の分断』などという批判が渦巻いた。だがこの批判は必ずしも的を射ていない」と指摘し、「75歳をすぎると食習慣や生活習慣に起因する慢性疾患などのリスクが高まる。増大するリスクを社会保険の原理だけでカバーするのは限界がある。そこで国・地方自治体の税金と現役で働く層が拠出する負担金で医療給付費の90%を賄い、残る10%は高齢者自らが保険料として負担する。膨張が避けられない医療費を各世代がどう分かつかを考慮した結果、この制度に行き着いた」と解説しています。

 また、神奈川県立保健福祉大学の山崎泰彦教授は、読売新聞(6月11日付)紙上で長寿医療制度について「高齢者を社会全体でしっかり支える仕組みができた」と評価し、現役世代と別建ての制度とするのは、「当面、高齢者に限定して社会連帯の基盤を強化したということで、現実的な対応」との見解を示しています。

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 長寿医療制度のような高齢者が対象の独立型の制度創設に関しては、小沢一郎氏(現民主党代表)が党首だった旧自由党が03年6月23日、「国は、高齢者について独立の医療保険制度を創設することとし、その対象者は70歳以上の者とする」と明記した国民生活充実基本法案を国会に提出したほか、民主党も05年のマニフェストで「透明で、独立性の高い、新たな高齢者医療制度の創設を含む医療・医療保険制度の改革に取り組みます」と宣言していました。


【問い】 保険料はどう軽減される?
所得割にも減額措置低所得者は最大9割減

 09年度からは、加入者が等しく負担する「均等割」が7割軽減される世帯のうち、加入者全員の年金額が80万円以下(その他の各種所得はない)の世帯については、9割軽減とします。これで「均等割」の軽減は、2割、5割、7割、9割の4段階になります<図参照>。9割軽減で保険料は月額約1000円から350円程度に減ります。




 また、所得に応じて負担する「所得割」は、年金額が153万円〜210万円程度までの人は50%程度(所得に応じて軽減率を変えることも検討。各都道府県広域連合が決める)減額します。これらの措置を講じても、なお保険料を支払えない事情がある場合は、個別の減免も含め、市区町村できめ細かく相談できる体制を整えます。

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 08年度については、「均等割」の7割軽減世帯のうち、8月まで保険料を支払っている人は、10月から半年間は保険料を徴収しません。これにより、1年間でみると「均等割」が8・5割の軽減となり、保険料は月額約1000円から500円程度に下がります。

 また、年金額が153万円〜210万円程度の人は、「所得割」を原則一律50%軽減します。

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 今回の政府・与党の軽減策により、国民健康保険から長寿医療制度に移行し、保険料が減少する世帯は、全国で69%から75%へと上昇。「64%の世帯が増加」していた沖縄県は「61%の世帯が減少」へ、「56%の世帯が増加」していた東京都は「71%の世帯が減少」へと転じるなど、全国的に低所得者の負担が軽減されるとともに、保険料の増減に関する地域間のバラツキが改善されました。


【問い】 年金天引きは改善される?
口座振替、肩代わり納付が可能に

 保険料の納め方は、選択の幅が広がります。過去2年間に国民健康保険料の滞納がなく確実に払ってきた人は、申請すれば、年金からの天引きを中止し、自分の口座から引き落とせるようになります(65歳から74歳の国保に加入する世帯主の年金からの保険料徴収も同じ扱い)。

 また、世帯主らに扶養されている年金額が180万円未満の人は、申請すれば、世帯主の子どもや配偶者による保険料の肩代わり納付が可能になります。

 厚生労働省は6月26日、10月から実施できるよう、各都道府県・広域連合に協力を要請しました。


【問い】 民主党など野党の対応は?
無責任な“対案なき廃止”を主張

 民主党など野党は、長寿医療制度を廃止し、問題点の多い旧老人保健制度を復活させるだけの後期高齢者医療制度廃止法案を参院に提出し、同廃止法案は6月6日の本会議で野党の賛成多数で可決されました。

 マスコミ各紙が「『元に戻せ』と言うだけでは問題は解決しない」(朝日)などと厳しく批判していた廃止法案は、衆院で次期臨時国会へ継続審議扱いとなりました。

 「高齢者と現役世代の負担割合がわかりにくい上、現役世代が払う拠出金に歯止めがなく、膨らむ医療費を誰が責任をもって抑制するかも明確でなかった」(読売 5月16日付)旧老人保健制度では、本格的な高齢社会に対応できないことは、与野党の共通認識であり、10年以上前から参院の委員会で、早期の新制度創設を求める決議<別掲参照>が行われてきました。民主党も当然、これらの決議に賛成しています。

 対案もなく新制度の廃止を主張するのは、極めて無責任であり、これまでの経緯と議論の積み重ねを無視した政局優先の“暴論”にほかなりません。


【旧老人保健制度に関する参院委での決議】

「できるだけ早期に新たな制度の創設も含めた抜本的見直しを行うこと」(1997年6月12日の厚生委員会での決議)

 「抜本改革の重要な柱である老人保健制度に代わる新たな高齢者医療制度等の創設については、早急に検討し(中略)必ず実施すること」(2000年11月30日の国民福祉委員会での決議)


他の改善点と今後の課題
 保険料を滞納した場合に発行され、一時的に治療費全額の支払いが必要となる資格証明書は、相当な収入があるにもかかわらず保険料を納めない悪質な人に限って適用されることになりました。この限定的適用の具体的な基準や実施時期は各広域連合が決めます。

 今後、与党はさらに、(1)保険料軽減措置の収入の判定基準を「世帯単位」から「個人単位」に見直す(2)年金からの保険料天引きの免除対象(年金額が年額18万円未満)を拡大する(3)70〜74歳の窓口負担を08年度に引き続き1割に据え置く――ことなどを検討します。

 なお、医師が患者と延命治療の方針などを事前に話し合い、文書に残した場合に支払われる診療報酬「終末期相談支援料」は、政府・与党の方針に沿い、7月から一時凍結されます。