そこが聞きたい――教育基本法案 Q&A

 1947年の施行以来、初の全面見直しとなる教育基本法案が国会に提出され、来週早々にも国会審議が始まります。現行法の理念を堅持しつつ、新たな時代の変化に対応する同法案の、主なポイントについてまとめました。
                       (2006年5月12日付 公明新聞から)

 教育基本法案のポイント

・「個人の尊厳」など現行法の理念堅持
・生命尊重、自然や環境と共生を反映
・生涯学習、振興計画など8条を追加
・義務教育「9年」の年限規定を削除
・障害者に配慮、家庭の責任を明記
・「国家主義に回帰」懸念は払しょく。


 なぜ今改正か

 
制定60年/教育現場の変化に対応

 現行の教育基本法は、前文と11条から成る簡潔な法律ですが、「教育の憲法」とも言われる重要な法律であり、改正には慎重な議論が求められてきました。このため、1947年の施行以来、一度も改正されていませんでしたが、約60年がたち、高校や大学などへの進学率は飛躍的に上昇。さらに、不登校や学級崩壊、児童虐待、ニート(若年無業者)・フリーターの増加など、青少年を取り巻く社会環境と教育現場が大きく変わったため、新時代に即応した教育基本法をめざし、全面的に見直すことになりました。

 これまで、2000年には、首相の私的諮問機関「教育改革国民会議」が、基本法見直しを含む17項目を提言。中央教育審議会(中教審、文部科学相の諮問機関)も改正すべきとの答申を03年3月にまとめました。これを受け、拙速な判断を避けるために与党で約3年間の議論を経て作成された最終報告に沿って、政府の教育基本法案がまとめられました。4月28日に、国会に提出されました。


 ポイントは

 
現行法の理念堅持/「生涯学習」など8条文追加
 
 前文と全18条で構成される教育基本法案は、現行法の骨格となる理念は堅持しつつ、時代の変化に対応した新しい項目を盛り込んだのが最大の特徴です。

 公明党は、現行法のうたう、「個人の尊厳」や「人格の完成」などの理念を高く評価。また、「国民主権」「平和主義」「基本的人権の尊重」を3原則とする憲法の精神を普遍的で優れたものとして、基本法との関係を明確に位置付ける「憲法の精神にのっとり」という表現も存続させるよう主張してきました。

 改正案では、こうした理念は堅持しつつ、「教育の目標」の条文では、「勤労」や「公共の精神」「生命」の尊重、「自然や環境との共生」などの概念が反映されています。

 さらに、「生涯学習の理念」「大学」「私立学校」「教員」「家庭教育」「幼児期の教育」「学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力」「教育振興基本計画」??の八つの条文が盛り込まれました。いずれも教育の現在の課題を明確に位置付けたものです。


 主な変更点は

 
義務教育「9年」削除/政府が振興計画策定

 「義務教育」については、将来の社会状況の変化に対応できるよう「9年」の年限規定を削除しました。また、「教育の機会均等」の条文では、障害者への配慮を明記するとともに、政府として教育振興の施策を総合的に推進するための教育振興基本計画を策定するよう規定されています。

 生涯学習では、超高齢社会の到来も見据え、あらゆる機会・場所で学習ができ、その成果を生かすことができる社会の構築を掲げ、大学は、学術の中心として専門性を高めるとともに、成果を社会に還元することが盛り込まれました。

 家庭教育については、父母など保護者の第一義的責任がうたわれています。
 教育の理念を示す基本法としては、将来の教育改革に十分対応できるものだといえます。


 公明の主張

 
統治機構除き国家主義の懸念払しょく

 公明党は「教育は、国家のためという『手段』ではなく、人格を完成させるという『目的』である」(太田昭宏幹事長代行)との観点から、基本法改正に取り組んできました。このため、戦前の軍国主義、国家主義を想起させるものとならないよう強く訴えました。

 与党内で検討を重ねてきた結果、焦点となっていた「愛国心」をめぐる表記について、国の3要素である、国土・国民・統治機構の中で、法案でいう「国」の概念には、「統治機構は含まない」ということが共通認識として醸成されました。

 こうしたことから、法案では、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養う」という表現になりました。

 国家主義的な意味合いが強くなる「ネーションステート」ではなく「カントリー」に近い「国」の表現とすることで、国家主義の懸念は払しょくできたと考えています。