すぐ分かるニュース教室――日本航空の再建問題
日本を代表する航空会社だった日本航空が19日、東京地裁に会社更生法の適用を申請し、経営破たんした。今後は裁判所の管理の下、企業再生支援機構の支援を受けて再建をめざすが、日航はこの“乱気流”から抜け出すことができるか。その動向が注目されている。
(2010年1月31日付 公明新聞)
『不採算路線の拡大が重荷に』
『Q 破たんの原因は?』
『A 不採算路線の拡大や高コスト体質が経営を圧迫。“国頼み”の甘えの姿勢も改革の障害に。』
日航は1951年に設立された戦後初の民間航空会社。53年に政府出資を受けて半官半民の特殊法人になった後、「ナショナル・フラッグ・キャリアー」(国を代表する航空会社)として路線網を拡大。87年に完全民営化された。
日航は19日、子会社で航空事業を担う日本航空インターナショナルと金融会社のジャルキャピタルとともに、東京地裁に会社更生法の適用を申請した。前もって利害関係者が債権カットなどで調整を行う、国内大企業初の「事前調整型」の法的整理だ。日航の負債総額は約2兆3200億円と戦後4番目の規模で、金融を除く事業会社では過去最大の規模となった。
会社更生法とは、企業が経営破たんしたものの、再建の見込みがある場合の再建手続きなどを定めた法律。同法の申請で企業は「倒産」となるが、企業は消滅しない。
日航の同法申請を受け、企業再生を手掛ける「企業再生支援機構」は同日、日航の支援を正式に決定。政府もこれを了承した。機構は裁判所から管財人に選ばれ、日航の再建を担う。 総額1兆6000億円の公的資金を有する機構は、出資や融資などを通じて、3年以内の企業再建をめざす官民出資のファンドだ。
日航が経営破たんした要因の一つは、不採算路線の拡大。多くの国内路線を拡大したが、2009年度上半期の日航の国内線は約7割の路線が採算の目安とされる利用率60%を割ったという。また、燃費の悪いジャンボ機の更新の遅れなどが高コスト体質の改善を妨げ、経営を圧迫した。
さらに、輸送をめぐる競争の激化も無視できない。最近は低価格を掲げる航空会社の新規参入が相次ぎ、新幹線の高速化なども日航の利用客の多くを奪った。
日航は国際線の路線も拡大し、1983年には国際線の輸送実績で世界一となったが、国際線は海外動向により収益が左右される不安定な要素も持つ。実際、2001年の米同時テロや新型肺炎の流行、リーマン・ショックなどで航空需要は大きく低下。米同時テロ以降、日航は日本政策投資銀行に数回の金融支援を受けた。日航の経営改革が進まなかった背景には、半官半民だった経緯もあって、「経営が危くなっても国が助けてくれる」との“国頼み”の意識から抜け出せない甘えもあった。
『大規模な人員削減など実施へ』
『Q 再建への道筋は』
『A 大規模な人員削減などを実施し、営業黒字をめざす。航空券の購入や予約に影響はなし。』
会社更生法の申請を受け、西松遥社長兼最高経営責任者(CEO)ら14人の取締役全員は退任。近く京セラ名誉会長の稲盛和夫氏を会長兼CEOとする新体制が発足する予定だ。
日航と主力銀行がまとめた事業再生計画では、全従業員の約3割に当たる約1万5700人の削減を断行。国際線と国内線で計31路線を減らすほか、ジャンボ機保有をゼロにし、燃費のいい中小型機に切り替える。
また、8676億円にも上る債務超過(2010年3月末見込み)の解消へ、銀行団は総額3585億円規模の債権放棄を行う。このうち、日本政策投資銀行の債権放棄額には、返済を政府が保証する約400億円超が含まれているため、この分は国民負担となる。 当面の資金繰り対策としては、機構と政投銀が約9000億円の公的資金を用意する。機構は、こうした支援策の実施で11年度の営業黒字をめざす。
一方で、懸念されるのは利用者への影響だ。
日航によれば、通常の運航サービスに影響はない。購入した航空券や予約は従来通り利用が可能。昨年発行された株主優待券も期限の今年5月末まで利用ができ、飛行距離に応じてポイントが付くマイレージも航空券や大手スーパーなどのポイントと交換ができる。
ただ、日航は100%減資とし、株式は“紙くず”同然となるため、株主責任を求められた約38万人の個人株主の痛手は避けられない。東京証券取引所は来月20日に日航の上場を廃止すると発表した。
どの路線が廃止になるかは、まだ明らかになっていないが、路線廃止に伴う地域への影響を懸念する声は強く、観光などの地域経済が打撃を被る恐れもある。
日航の再建策をめぐっては、鳩山政権の迷走が目立った。前原国土交通相は9月の就任直後、肝いりの作業部会を設置し、作業部会は10月に再建策を示したが、銀行団との調整に失敗。日航の破たんが現実味を増す中、「失われた1カ月」と批判された。