
憲法改正の手続きを定める国民投票法案の国会審議が進んでいます。そこで、公明党憲法調査会座長で衆院憲法調査特別委員会理事の赤松正雄衆院議員に、憲法と国民投票法案に対する公明党の考え方を聞きました。
『憲法96条の規定を具体化――改正論議衆参の審査会で時間かけて』
『公明は平和主義を堅持』
――そもそも国民投票法案とは何ですか。
赤松正雄衆院議員 国民投票法は本来、憲法ができた60年前につくられているべき法律です。
今の憲法は国民主権、つまり「国民が主人公」ということを定めた憲法です。その証しとして憲法も国民投票で承認を得れば改正できると、憲法96条に定められています。
ところが憲法制定時の時代的背景があって、改正する場合の手続きを定める法律がつくられないまま、今日まで来ました。本来、憲法に付随してあるべきものがないということで、憲法改正の論議とは別に、「本来あるべきルール」を整えておこうと、国民投票法案が提案されたわけです。
共産、社民両党は改憲につながるとして、国民投票法案の制定自体に反対していますが、国民が主権を行使するための手続きを定めるのは当たり前の話で、それを行わないのは国民が持つ主権を放棄するに等しいといえます。
――同法案について自民、公明、民主の3党で合意形成のための協議が続けられてきました。
赤松 憲法に関する国民投票法という非常に大きなテーマですから、できるかぎり大勢の人たちの賛同で、与党だけでなく野党も含み込んだ形で成立させることが望ましいということで、自民、公明、民主の3党でずっと協議をしてきました。その結果、昨年12月14日には自公民の3党でほぼ合意を得た修正案ができました。
ところが、今国会に入って民主党が心変わりしてしまいました。統一地方選、参院選で有利なように「与党に成果を挙げさせない」「民主党の独自性を打ち出す」という方針を決めてしまいました。円満な形で憲法改正の手続き法をつくろうとしていたのに、民主党の党利党略によって土壇場でいびつな形になったことは誠に残念です。
結局、与党は民主党の主張を大幅に盛り込んだ修正案を提出し、衆院で可決され、参院で今、審議中です。民主党も衆院に修正案を提出しましたが、否決されました。
――参院で審議中の国民投票法案(与党修正案)の主な内容は。
赤松 国民投票法案と、否決された民主党修正案の最も大きな違いは、国民投票の対象にありました。
民主党修正案は、国民投票を憲法改正のためだけに限定しないで、国政上の重要課題も国民投票の対象にしていたのです。
ここは、やはり、対象を広げないで、まず憲法改正のための国民投票制度をつくるべきでしょう。
ただ、国民投票法案には、憲法の何を変えるかなど、その方向性について国民の意見をあらかじめ聞く“予備的な国民投票”を憲法審査会で検討することを盛り込んでいます。
一方、国民投票の投票権者は、国民投票法案では公明党の主張もあって、自公民3党の合意通り「18歳以上」となっています。
これに関連して選挙権も「18歳以上」とするよう、施行までの3年間に公職選挙法を見直すことも付則で定めています。18歳選挙権は公明党のかねてからの主張ですからね。
公務員、教育者の地位利用による国民投票運動についても、自公民3党の合意に基づいて、禁止としますが罰則は設けないことにしています。
――国民投票の成立要件として最低投票率を設けるべきとの意見がありますが。
赤松 衆院で否決された民主党修正案に、最低投票率の規定はありませんでした。ところが参院の審議では一転、民主党までもが憲法改正という重要な問題が仮に60%の投票率だと30%の得票率で決められてしまうことになり、おかしいと言っています。
確かに、この点はなかなか悩ましい問題ではありますが、最低投票率を定めた場合、ボイコット運動につながる恐れがあります。
例えば、投票率40%以上でない国民投票は成立しないと決めてしまうと、有権者が投票に行かないようにしようと棄権を呼び掛けるなど、国民投票自体がねじ曲げられてしまう可能性があります。
むしろ、憲法改正という極めて重要な問題に大勢の人が投票しないことは想定しづらいわけですから、最低投票率という制限を設けないで、自然体にしておいた方がいいというのが与党の考え方です。
――国民投票法案は改憲に道を開くものだとの主張があります。
赤松 国民投票法が成立したら即改憲につながるというのではありません。むしろ、改正をする、あるいは、しないも含めて、すべてはこれからなんです。
衆院での与党修正案では、国民投票法の公布後に開かれる国会で衆参両院に設置される憲法審査会での改正原案の審議凍結を、公布後2年から3年間に延長しました。これは「どこをどう変えるのか、それとも変えずともいいのか、といった本格的な憲法論議を憲法審査会において時間をかけてやりましょう」という公明党の主張が取り入れられたものです。
公明党は“初めに憲法改正ありき”ではありません。「国民的合意ができるところから加憲するのはいい」という立場です。その合意を探る場所が憲法審査会です。
――公明党の憲法に対する姿勢は。
赤松 公明党は結党以来、国民主権、基本的人権、恒久平和主義の憲法3原則をとても大事に思ってきた政党です。
しかし憲法制定から60年がたって、当時は想定されていなかった課題などがたくさん出てきたこともまた事実です。
私たちは、21世紀初頭を生きる日本人が自分たちの手と頭で考えた憲法を持つことがあっていいとの考え方から、現在、「加憲」という立場に立っています。
これは、憲法3原則を堅持・発展させつつ、新たに必要とされる理念や条文を加えて憲法を補強するという立場です。家の建て替えに例えると、全面新築ではなく、増築ないし改築といったところでしょうか。
恒久平和主義の象徴である9条については、1項(戦争放棄)、2項(戦力不保持)ともに堅持した上で、自衛隊の存在の明記や国際貢献のあり方をどうするかについて、論議しています。
しかし、9条堅持ですから、自衛隊の明記といっても、自衛隊を軍隊として位置付けるのではなく、「自衛のための必要最小限の実力」の保持を明記するということです。
国際貢献についても、自衛隊は国連安全保障理事会の決議に基づく伝統的なPKO活動(国連平和維持活動)などには参加しますが、イラクにおける治安維持活動などのような武力行使を伴うものには参加しません。また、いわゆる集団的自衛権の行使は認めません。
こういう考え方に立つ公明党が政権に参画している限り、恒久平和主義を踏みにじるような形での改憲は断じてさせません。
(2007年4月27日付 公明新聞)