新防衛大綱どう見る――赤松正雄 党外交安全保障調査会長に聞く
政府は17日、2011年度から10年間の日本の防衛指針を示す新たな「防衛計画の大綱(防衛大綱)」と、11年度から5年間の防衛予算の大枠となる次期中期防衛力整備計画(中期防)を閣議決定した。これに対する公明党の見解について、党外交安全保障調査会の赤松正雄会長(衆院議員)に聞いた。
(2010年12月27日付公明新聞)
不明確な「動的防衛力」
場当たり政策の不安拭えず
――閣議決定された防衛大綱の内容をどう見ますか。
赤松正雄・党外交安全保障調査会長 今回の大綱では、「日米同盟の深化」など対米重視の姿勢を示しています。しかし、民主党政権には当初から、「対等な日米関係」や日米中の関係を等距離に見る「正三角形」論を展開する勢力が存在しています。普天間飛行場の移設問題で迷走したように、その場当たり的な外交安全保障政策に対する国民の不安はいまだに拭い切れていません。今回の見直しについても、活発に議論が行われた様子はなく、これまでの混乱ぶりを裏付けるかのような“分かりにくさ”の目立つ内容だと言わざるを得ません。
――具体的には。
赤松 これまでの大綱で踏襲されてきた「基盤的防衛力構想」から初めて脱却し、「動的防衛力」の構築を掲げました。基盤的防衛力構想とは、テロやミサイルなど多様な脅威に対応するため、必要最小限の防衛力を維持し、全国に部隊を均等に配置する防衛態勢で、防衛力の存在自体に抑止の役割がありました。その上で、前大綱(2004年)では「多機能で弾力的な実効性ある防衛力」の整備を打ち出していました。
これに対し、今回掲げられた「動的防衛力」については、「平素からの各種活動を適時・適切に行うことによって国家の意思や高い防衛能力を示す」と定義付けています。狙いは間違っていませんが、従来と比べてどう違うのか、説明が不明確なのは否めません。
――「専守防衛」に矛盾する可能性を指摘する向きもあります。
赤松 新大綱と次期中期防でも、部隊編成や装備の数量を示す「別表」を定めています。しかし、「基盤」的な側面を排除し“動的”を強調する中で明確な歯止めを示していません。このため、防衛力を突出させる危険性をはらんでおり、現行憲法の範囲内での「専守防衛」を逸脱する可能性は否定できません。
――北朝鮮や中国の動向に対して懸念を示していますが。
赤松 北朝鮮は依然として核開発への意図を隠さず、韓国への砲撃事件を機に朝鮮半島情勢は緊迫しています。また中国も軍事力の近代化を不透明なまま進め、東シナ海や日本周辺海域での活動を活発化させており、各国は懸念を抱いています。こうした状況に応じて両国への対処に重点を置いた点は容認できます。しかし、過剰な対応による刺激は避けるべきで、特に中国とは、知恵の限りを尽くす外交努力を続け、両国相互に恩恵をもたらす経済協力などを推進することが重要です。
――新大綱では、具体的な装備や編成にも変化が見られました。
赤松 今回、戦車など陸上自衛隊の装備を減らし、南西諸島や島しょ部の防衛強化などを掲げました。ただし、新たな部隊の展開を行う際には幅広い国民への説明は言うまでもなく、特に北海道や沖縄県など“受け皿”の変更を伴う地域への十分な配慮が不可欠です。
――今回は武器輸出3原則や国連平和維持活動(PKO)参加5原則の見直しなどは先送りされました。
赤松 この二つの見直しは、憲法との関係から見て、慎重を要するのは当然です。武器輸出3原則の見直しを先送りする際も、政府・与党内で十分な議論が行われたとは言えません。そもそも「武器(技術供与も含め)を他国に安易に輸出しない」との方針は、「防衛大綱」を越えた国家戦略そのものにかかわる重要な問題です。広範囲な国民的議論の対象としていくべきでしょう。