被用者年金の一元化、方針決定で福島豊・党社会保障調査会長に聞く


厚生、共済の年金格差を是正
保険料率は18年統一
公務員OBの年金を減額。追加費用は削減
共済独自の「職域加算」は10年廃止
 政府は4月28日、被用者年金(厚生年金と共済年金)の一元化に関する基本方針を閣議決定し、20年来の懸案であった被用者年金一元化の具体的な道筋を示しました。公明党は2005年9月の衆院選で被用者年金の一元化をマニフェスト(政策綱領)に掲げ、官民格差の是正に全力で取り組んできました。基本方針の背景やポイントについて、福島豊党社会保障制度調査会長に聞きました。


??被用者年金一元化の経緯と意義について。

福島 2004年の年金改正の折に、いくつかの制度に分立している年金制度を一元化すべきとの指摘があり、改正法の附則には「公的年金制度の一元化を展望し、体系の在り方について検討を行う」と規定されました。

 その後、与野党間でも議論されましたが、最終的には与党が精力的に検討を重ね、今般、政府・与党で基本方針がまとめられました。

 公務員の共済年金は厚生年金に比べて優遇されており、“官民格差”是正の観点から被用者年金の一元化が強く求められていました。

 今後、公務員制度改革が予定される中、被用者年金を一元化することで、保険の規模を拡大し、制度の安定性を高めることも大切な視点です。


??基本方針のポイントは。

福島 同じ保険料を支払い、同じ年金を受けるという、保険料と給付の官民格差を是正することが最大のポイントです。

 現在、厚生年金と共済年金では保険料率に大きな格差があります<図1参照>。共済年金は、より少ない保険料で厚生年金と同等の給付が得られ、現行制度の枠組みでは、その格差は将来にわたって解消されません。


<注> 「国共済」は国家公務員共済。「地共済」は地方公務員共済。
「私学共済」は私立学校教職員共済。保険料率は労使で半分ずつ負担。

 基本方針では、国家公務員共済と地方公務員共済の保険料率が統一される翌年の10年から、公務員共済の保険料率を厚生年金と同じく毎年0・354%ずつ引き上げ、18年に厚生年金の料率(上限の18・3%)に統一します。厚生年金の保険料率が上限に達するのは17年であり、保険料率の引き上げスケジュールもほぼそろえる形で官民格差を是正します。

 民間組合である私立学校教職員共済の保険料率は、27年に厚生年金に統一されます。


 次に給付においては、厚生年金が2階建てであるのに対して、共済年金には「職域加算」という3階部分がある<図2参照>ことが、官民格差の象徴の一つとして世論から批判されています。

 基本方針では、公的年金としての職域部分を10年に廃止します。

 ただ、民間には企業年金という私的な3階部分をもつ企業があります。退職金とあわせ、退職後の所得保障をするものですが、こうした民間の制度に準拠する形で、新たに公務員制度としての仕組みを設けます。具体的な仕組みは民間の企業年金や退職金の実態調査を踏まえて検討されます。

 さらに、公務員共済が有利と言われるのは、公務員OBの年金の中に、かつての恩給制度に基づく給付の部分があり、その財源として多額の公費(追加費用、国と地方で約1兆7000億円)が投入されている点です。

 この点は、公務員OBの年金を一定程度、減額し、追加費用を削減することで合意しました。


??積立金の扱いは。

福島 共済年金は1、2階部分に相当する積立金と3階の職域加算部分に相当する積立金をもっています。

 この共済年金の1、2階部分の積立金は、厚生年金の積立金とともに被用者年金制度の共通財源とし、一元的に管理・運用することを基本とし、運用ルールを統一します。

 具体的に、共済年金においてどの程度の積立金を共通財源に供するかは、「1、2階部分の支出に対して何年分の積立金があるか」の水準が、厚生年金と同一になるよう決定します。


『巨額積立金の運用が課題』

??さまざまな制度上の違いについては。

福島 例えば、共済年金独自の有利な制度として、遺族年金の転給制度があります。これは廃止します。

 また、60歳代前半の退職した公務員が民間企業に再就職して厚生年金の被保険者となった場合、賃金と年金の合計が「月48万円まで」は年金が全額支給されますが、この基準を改め、同年齢のサラリーマンが再就職した場合と同様の「月28万円まで」に統一します。


??追加費用は廃止すべき、あるいは基本方針では削減幅が少なすぎるとの意見もありますが。

福島 追加費用を単純に廃止し、かつての恩給制度に基づく給付をすべて削減した場合、実際に受給者の生活は成り立つでしょうか。

 追加費用を廃止し、その代わり現役公務員の保険料を上乗せして徴収することで、公務員OBの年金財源を確保すべきとの意見もありますが、自ら受け取ることのない年金の給付に対して、現役世代が専ら負担を引き受けることは、社会保険の原理から言って無理があります。

 したがって、受給者の生活にも配慮し、一定程度の追加費用を削減するのが妥当であると判断しました。

 恩給制度では、公務員は俸給に対して、保険料と同様の性格をもつ2%の恩給納金を納めていました。社会保険方式の共済年金制度に切り替わった当初、本人負担分の保険料率は4・4%。この4・4%と2%の差(2・4%)に着目し、事業主の負担分を含めた全体の保険料率8・8%に対する比率に基づき、追加費用による給付は一律27%減額することに決めました。

 ただし、財産権への配慮から、公務員OBがトータルで受け取る年金の削減幅は10%を上回らないこととし、また、受給者の生活の安定を確保するため、減額により、年金が年250万円を下回らないようにしました。これは平均的な収入のサラリーマンが40年間加入した場合の厚生年金に比べ、年30万円程度低い水準です。


??今後の課題は。

福島 一つは巨額になる積立金の運用をどのようにしていくかということ。また、最も効率的な運営ができるように、最終的な組織運営の在り方を詰めていく必要があります。

 さらに、職域加算の廃止後に新たに公務員制度としての仕組みを設けますが、看板の付け替えとか、焼け太りなどと言われないよう、公平性の保たれた制度を検討しなければなりません。


(2006年5月1日付 公明新聞)