自殺防止の突破口に。初の対策基本法が成立??木庭健太郎参院幹事長にインタビュー


社会的な取り組み必要
国、自治体、事業主などの責務を明記
遺族・未遂者の支援も
 自殺防止対策と自殺者の遺族支援などを定めた「自殺対策基本法」が通常国会で成立しました。同法は議員立法として、超党派の議員連盟が法案づくりに取り組んできました。議員連盟に公明党から参加した木庭健太郎参院幹事長(参院選予定候補=比例区)に、自殺対策基本法のポイントや法制化の経緯をインタビューしました。


『8年連続で約3万人の自殺』

??自殺対策基本法を制定した理由は。

木庭参院幹事長 日本では1998年から8年連続で、自殺者が3万人前後で推移しています。この深刻な現状を打開するには、国が自殺防止に真正面から取り組むための基本となる法律が必要です。

 NPO(民間非営利団体)が自殺防止などに懸命に取り組んでくださっていますが、その努力は限界に達しており、行政の手助けが求められています。


??基本法のポイントは。

木庭 自殺は個人の問題と捉えられがちですが、その原因をたどっていくと、社会的要因が大きな要素として横たわっています。うつ病が自殺の原因の多くを占めていますが、うつ病の背景を探っていくと、過重な長時間労働など社会的要因が浮かび上がる場合があります。

 自殺は個人の問題ではなく、社会の病巣が形として現れた問題であるとの認識が重要であり、自殺対策は「社会的な取り組みとして実施されなければならない」との基本理念を明確にしたのが、一番のポイントです。

 その上で、国、地方自治体、事業主などの責務と医療機関、学校、民間団体などの役割、位置付けを明確にし、「相互の密接な連携」を規定している点が重要です。

 例えば、効果的な自殺防止対策を確立するためには、自殺に至る実態の解明と分析が不可欠ですが、現状は全く把握されていません。基礎となる情報の収集は、最初に現場に駆けつける警察との連携が欠かせませんが、法律的な裏付けがなければ、警察の協力は得られないでしょう。


『政府に対策会議を設置へ』

??国、地方自治体が実施すべき施策は。

木庭 基本的な施策として9項目を定めています。この中での一つのポイントは、残された遺族・自殺未遂者へのケアを明記した点です。現状は対策が全く無きに等しい状況ですが、関係者の連携によって支援策を形づくっていきたいと考えています。

 組織面では、総合的な施策を統合した形で推進するため、内閣官房長官をトップに関係閣僚で構成する「自殺総合対策会議」の設置が基本法に盛り込まれています。


??政府が策定する自殺対策大綱とは。

木庭 自殺者を減らすために何をどう取り組むか、整理が必要です。例えば、公明党が推進した包括根保証(返済責任の上限や期限を定めない融資慣行)の禁止によって、中小企業経営者の自殺が減ったと言われているように、法律を変えることによって自殺の背景にある社会的要因を取り除けるなら、法改正にまで踏み込まなくてはなりません。

 国民の心の健康を保つための体制整備も不可欠です。

 自殺対策は自治体によって大きな開きがあります。既に先進的な取り組みで成果を挙げている自治体もあれば、対策が皆無の自治体もあり、格差是正に向けて、自治体に取り組んでいただく内容を大綱の中で明確にしなければなりません。


『坂口厚労相時代の報告書が法律の基礎に』

??法制化の経緯と公明党の取り組みは。

木庭 公明党の坂口力副代表が厚生労働相の時に「自殺防止対策有識者懇談会」が設置されました。

 この有識者懇談会の報告書(2002年12月)では、(1)効果的な予防対策が緊急の課題(2)包括的な対策が必要(3)「死にたい」人は救える(4)実態把握が不可欠(5)国民全体への啓発(6)未遂者・遺族へのケア??などが提言されました。

 さらに05年7月には、参院厚生労働委員会で同報告書の内容をさらに一歩進めた形で「自殺に関する総合対策の緊急かつ効果的な推進を求める決議」を行いました。

 これを受けて、関係省庁の事務官で自殺対策連絡会議が発足し、縦割り組織で分断されていた自殺対策が、国として初めて、一つの輪になってやれるところまできました。

 しかし、自殺防止の突破口が開かれたかというと、そこまでは至っていません。そこで、超党派の議員連盟を立ち上げ、その中に公明党も加わり、突破口となる法案づくりに取り組みました。

 法案と坂口厚労相の時代に策定された報告書を見比べるとよく分かりますが、まさに報告書が法案の基礎になっています。

 私は議連の中で、法律の早期制定を強く訴え、法制化の流れを加速しました。

 一方、公明党厚生労働部会では早期の法整備の立場から、自殺防止と遺族支援に取り組むNPOと協議するとともに、自治体の先進例として秋田県の試みを学ぶ勉強会を開くなど、精力的な取り組みを続けてきました。


(2006年6月19日付 公明新聞)