与党が最終報告。21世紀拓く教育基本法に??太田昭宏・幹事長代行に聞く


検討会で70回の論議
「個人の尊厳」「憲法の精神」など現行法の理念を堅持
前文と全18条 時代の変化に対応
 実務者で構成する与党の教育基本法改正に関する検討会が最終報告をまとめた。約3年にわたる議論を経て、政府に提出された最終報告のポイントについて、検討会メンバーの太田昭宏・党幹事長代行に聞いた。


??改めてなぜ今、基本法の改正なのですか。

太田 時代の大きな変化に対応する教育を確立するためです。教育基本法が施行された1947年当時は、小学校教育さえ受けさせられない家庭もありました。それが約60年を経て、高校への進学率は今や約97%になります。大学・短大への進学率も約5割となり、むしろ大学のあり方など質が問われるようになりました。さらに、基本法制定当時には想定されていなかった児童虐待やニート(若年無業者)・フリーターの増加、不登校や学級崩壊の問題などがあり、社会も教育現場も大きく変化しています。このため、2000年には、首相の私的諮問機関「教育改革国民会議」が、基本法見直しを含む17項目を提言。中央教育審議会(中教審、文部科学相の諮問機関)も改正すべきとの答申を03年3月にまとめています。そこで、法改正にあたって、拙速な判断があってはならないということで、与党で引き取り、実務者で構成する検討会で約3年にわたり、70回の議論を重ねて、今回の最終報告となりました。


??最終報告のポイントは。

太田 現行基本法の基本骨格は堅持し、時代の変化に対応した項目を盛り込んだことが最大のポイントです。「個人の尊厳」「人格の完成」など現行法の骨格となる理念や、「基本的人権の尊重」「平和主義」「国民主権」の三原則を軸とする憲法の精神は、普遍的で極めて優れたものと認識しています。前文に、教育基本法と憲法の関係を明確にする「憲法の精神にのっとり」という言葉を残したほか、骨格となる理念は堅持されました。

 その上で、前文と全18条からなる最終報告では、「生命の尊重」「自然や環境との共生」の概念や、「知・徳・体」の育成、社会の形成に主体的に参画する「公共の精神」なども「教育の目標」の中で明確に反映されました。そして新たな項目として、「生涯学習の理念」「大学」「私立学校」「教員」「家庭教育」「幼児期の教育」「学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力」「教育振興基本計画」の8項目が加わっています。いずれも時代の変化に対応するために大変、重要な項目です。


??教育現場は変わりますか。

太田 これまでも、国民会議の提言は、法改正などで具体化されてきました。その中で、最後に残ったのが基本法の改正です。与党の最終報告では、国が教育振興基本計画を策定し、教育の方針を示す規定が盛り込まれたほか、将来の社会状況の変化に対応できるよう、義務教育は9年とする年限の規定も削除されました。「生涯学習の理念」では、あらゆる機会・場所で学習でき、成果を適切に生かせる社会がうたわれ、「大学」の項目では、「知」の世紀をリードする学術の中心として、専門性を培うこと、職業や社会とのかかわりが強調されています。教育の理念を示す基本法としては、将来の教育改革に十分対応できる、未来志向のものだと言えます。


??国家主義への回帰を懸念する声もありますが。

太田 個々人が、親や兄弟、郷土や国を愛するという感情を持つに至ることを否定するものではありませんが、法律で規定することに対しては慎重な議論が必要だと考えました。検討会の論議においても「国家主義的色彩にならない」、国の三要素である「国土」「国民」「統治機構」の中で、「統治機構を含まない」ということは、与党の共通認識となっていました。最終報告の「教育の目標」の中では、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土」とすることで、国家主義的な「ナショナリズム」ではなく、郷土といった意味合いの強い「パトリオティズム」、「ネーションステート」ではなく「カントリー」に近い表現にできたと思います。また、「他国を尊重」「国際社会の平和と発展に寄与する態度を養う」と続くことで、国家主義の懸念は払拭できたと認識しています。


??今後の見通しについて。

太田 法案の提出時期は、政府が判断することですが、最終報告を受け、現在、政府において法案作成作業が進められています。法案が提出されれば国会の場での論議となります。


                             (2006年4月15日付 公明新聞)