
衆院では野党が審議・採決ボイコットを続ける中、今国会の最重要法案と位置づけられる教育基本法案が可決され、17日には参院で審議が始まりました。与党協議会のメンバーとして、法案の作成に携わった公明党の斉藤鉄夫政務調査会長に、同法案について聞きました。
『民主党案の欠陥』
国家主義の懸念ぬぐえず
政治の影響を受けやすい
信教の自由に抵触の恐れ
??教育基本法案を衆院で採決した理由は。
斉藤 政府案、民主党案ともに十分に議論が尽くされ、国民各層の意見も聞いたというのが採決を判断した理由です。法改正の本格的な議論は、6年以上前の2000年3月に設置された教育改革国民会議(首相の私的諮問機関)にまで遡ります。その後、中央教育審議会(中教審、文部科学相の諮問機関)でも改正すべきとの答申がまとめられました。この間、保護者の代表や学識経験者、教職員組合の代表など、さまざまな方々が参加して濃密な議論が重ねられてきました。
中教審の答申後、与党でも拙速な判断を避けるために3年間で70回に及ぶ議論を行い、与党としての考えをまとめました。その考えを基本とした政府案が提出され、民主党案とともに特別委員会で、100時間を超す審議がなされました。また、全国6カ所での地方公聴会や、中央公聴会を開き、4回の参考人質疑では、合計16人の方に意見を伺いました。終盤では、質疑内容の重複も目立つようになり、基本法そのものに関する議論はほとんどありませんでした。審議が不十分とする野党の主張には少し無理があると思います。
ここまで国会を含め国民各層で真摯にご議論頂いたことに対し、一定の結論を得ることは国会の責務だと考えます。
??いじめ自殺や未履修問題などが起きていますが。
斉藤 これらの問題については、与党教育再生協議会の場でも議論を重ね、できるものについては具体的な方針も示しています。理念を定める教育基本法案の議論と混同せず、国会においては文部科学委員会など各委員会で審議すべきものではないでしょうか。
??政府案は完成度が高いと主張していますが。
斉藤 理由は2点あります。一つは、現行法の足らざるものを適切に補ったということです。われわれは、「個人の尊厳」や「人格の完成」という理念を掲げる現行法を高く評価し、政府案でも堅持していますが、1947年の制定時とは時代も大きく変わっています。例えば第3条で、生涯学習の理念を規定し、当時焦点となっていた学校教育や義務教育だけに限らず、人生のあらゆる段階で学ぶことができる環境の整備をうたっていることも一例です。
二つ目は、バランスがとれた、誰もが「中道」だと判断できる内容であることです。国民の間にはさまざまな考え方があります。愛国心といっても、自己犠牲を求めるような愛国心を主張する意見もあれば、基本法に盛り込むこと自体に反対する意見もあります。その中で政府案では、誰もが認める「郷土愛」を基調とし、国際社会への広がりを持った表現になっています。大きな議論になった「宗教教育」についても、幅広い意見を持つ人たちの最大公約数的な内容になったと思います。
民主党案だと、ある部分はかなり保守的な人に向けて作られ、ある部分はその対極にいる人たちを満足させる内容とするなど、全体として整合性がとれていません。政府案は、全条文に関して、幅広い意見を持つ人たちから、できるだけ多くの納得を得るための配慮がなされています。その意味で、公明党が与党にいたからこそできた、完成度が高い法案だといえます。
??民主党案の欠陥は。
斉藤 最大の欠陥は、地方自治体の教育委員会を廃止し首長が直接教育行政を行うと規定し、教育の中立性、政治からの独立性が制度的に担保(保証)されていないことです。また、愛国心の表記では、国家主義の懸念を払しょくできません。民主党案がうたう「宗教的感性の涵養」は、特定宗派の実践を離れてはあり得ないもので、これを公立学校で行うことは、憲法で定める信教の自由に抵触する恐れがあります。ですから民主党案には、共産、社民の両党も反対しています。
民主党は自ら提出した法案の審議・採決をボイコットしましたが、これは筋が通りません。民主党案は政府案に反対するための政争の具だと判断せざるを得ないと考えます。