チャイルドファースト(子ども優先)社会を築く??少子社会トータルプランで坂口力・党対策本部長に聞く


仕事と生活の調和へ働き方の見直し必要
子育てコスト軽減へ
児童手当や奨学金など拡充
 公明党は27日、チャイルドファースト(子ども優先)社会の構築をめざす「少子社会トータルプラン」を決定した。党少子社会総合対策本部の坂口力本部長(副代表)にトータルプランの基本的な考え方やポイントを聞いた。

  ◇    ◇

??トータルプランの基本的な考え方は。

坂口本部長 子育てを社会の中心軸に位置づけ、社会全体で支援する「チャイルドファースト」(子ども優先)社会の構築をめざしている。

 中身は、政府が6月にまとめる骨太方針に反映させたい。

 もちろん結婚、出産をする、しないは本人の意思と選択に委ねられるべきもの。公明党は個人の意思を尊重することに十分な配慮を払いながら、子どもを産みたいと願う方々には積極的に機会を与え、保障することが重要と考えている。

 しかし、現実の子育てにはさまざまな阻害要因があり、これを取り除いていく必要がある。


??阻害要因とは。

坂口 大きく二つ挙げられる。一つは、生活を犠牲にした働き方。つまり、正規労働者は長時間労働に苦しんでおり、例えば南関東では、平日の帰宅時間が23時から翌朝3時までの間になる父親の割合が20%に達している。一方、パートや派遣などに代表される非正規労働者は、不安定な身分保障からくる将来への不安で結婚に踏み切れない人も多い。

 また、女性の正規労働者にとって、結婚、出産、育児は大きな負担。育児休業が法律的には認められているが、現実には取りにくい環境がある。

 男女共同参画社会の遅れが、少子対策の遅れに連結しているものと考えられ、早急な是正が求められる。

 二つ目の阻害要因は、子育てに関する経済負担の重さ。特に、教育費がかかりすぎる。


??出生率の目標設定について。

坂口 2015年に出生率を1・50にまで回復するとの目標を提案した。政府にも実現を申し入れる。

 04年の年金改正では、50年時点の出生率が1・39にまで回復することが前提になっているが、それでは日本の人口減少が激しすぎる。構造改革を推進し、いち早く少子化に対応すべきだ。


??対策の柱は。

坂口 (1)生活を犠牲にしない「働き方」へどう転換するか(2)子育ての負担を過重にしない「支え方」をどう社会に確立するか??の二点が柱だ。

 「働き方」の改革は、社会の仕組みを変える構造改革であり、国がリードすべき問題。一方、「支え方」の改革は、どれだけの財源をつぎ込めるかという問題。支え方には地域性があり、地方の考え方を積極的に取り入れていく分野だ。


??主な具体策は。

坂口 まず、生活を犠牲にしない「働き方」への改革では、時間外労働の割増賃金率の引き上げが挙げられる。日本の時間外労働の割増率は25%(休日35%)と、諸外国(50%)に比べて低い。このことが、コスト削減の観点から、少人数で時間外労働を増やすことに結びつきやすい。そして、時間外労働が増えた人の家庭では、母親が育児のすべてを担うことになり、過重な負担がかかってしまう。

 そこで、割増賃金率を40%(休日50%)に引き上げ、一人に長時間、働いてもらうのではなく、雇用の機会を増やすことで全体のバランスをとっていく方向に改める。

 ただし、中小企業には厳しい措置なので、正規労働者を増やして対応してくれる中小企業には、緩和措置や助成金、税制の優遇を検討したい。

 そのほか、パートや派遣など非正規労働者については、一定期間、雇用を継続した場合、正規労働者への移行を義務づけるとともに、非正規労働者の多い企業には、雇用保険料の引き上げも視野に入れる。

 さらに、正規短時間労働の位置づけを明確にしながら、正規労働者と非正規労働者の間の賃金や社会保険の加入における格差をなくす。非正規労働者への社会保険の未適用が、非正規労働者の増加に結びつき、経済的理由で結婚できない人を増やす要因になっている。

 オランダには、夫婦それぞれが0・75人分ずつ、合わせて1・5人分働き、お互いに時間をつくりながら子育てする仕組みがある。このオランダ方式の導入も検討する。


『財源で育児保険も提案』

??若者が結婚できる環境整備は。

坂口 そのため、雇用の問題に真正面から取り組むとともに、新婚家庭の家賃補助など家族形成を支援する「ネスト(巣作り)プラン」の策定を政府に求める。私たちも具体的な提案をしていきたい。

 トータルプランは、公明党がかねてから推進してきた児童手当の拡充や保育所待機児童ゼロ作戦など「生まれ出た子どもたちに対する支援」に加え、結婚できる雇用環境の整備や子どもを産み育てるための良質な住宅の提供など「子どもたちの生まれ出ようとする環境への支援」を進める点に一つの特徴がある。


??子育ての負担を過重にしない「支え方」を実現するためには。

坂口 経済負担の軽減へ、児童手当を18歳までに拡大し、かつ支給額も倍増できるよう、財源の確保に努める。

 また、高等教育の家庭負担が増大していることを踏まえ、奨学金を一層受けやすくするとともに、利息の上限を抑制し、利子補給を行う。

 それから、児童福祉法上の「保育に欠ける」との保育所の入所要件を見直し、どんな家庭のお子さんでも、保育所に入れるようにする。

 また、今年10月から本格実施される就学前の乳幼児を対象とした「認定こども園」を拡充し、保育所待機児童ゼロ作戦を強化するほか、ともに小学生を対象とした放課後児童クラブ(厚生労働省の所管)と地域子ども教室(文部科学省の所管)を一体化して小学6年生まで預かる「放課後子どもルーム」(仮称)の創設を政府に働きかけていく。


??不妊治療への支援については。

坂口 顕微授精や体外受精に対する年間10万円の助成は少ないので、20万円に倍増したい。

??広範な改革の財源をどう確保するか。

坂口 いろいろなハードルがあることは承知しているが、育児保険制度を正式に提案したい。

 この問題は、年金、医療、介護、雇用、労災と現在ある各保険制度との関連もあるので、ここからの支援を強化することも、次善の策だ。

 しかし、財源がなお足りない場合には税制からの支援を検討する。広く薄く負担する消費税の導入についても理解を求める必要がある。いずれにしても子育ては社会全体で支援しなくてはならない。

(2006年4月29日付 公明新聞)