ハンセン病基本法が成立。地域に開かれた療養所へ――谷合正明・党プロジェクトチーム事務局長に聞く


施設開放し、医療、介護も整備
意思に反する退所、転所を禁止
 国立ハンセン病療養所の地域開放を可能とし、入所者の方々が「孤立」することなく、安心して老後を過ごせるようにするための「ハンセン病問題の解決の促進に関する法律」(通称・ハンセン病問題基本法)が11日、成立しました。同法の意義やポイントを、谷合正明・党ハンセン病対策検討プロジェクトチーム事務局長に聞きました。


――なぜ基本法が必要だったのですか。

谷合正明事務局長 議員立法である同法は通常国会終盤の6月11日、可決・成立しました(2009年4月1日施行)。

 同法の制定は、各ハンセン病療養所の入所者の自治会でつくる全国ハンセン病療養所入所者協議会(宮里光雄会長)の皆さんが、「56年間の運動の集大成」と位置付け、「人生をかけた最後の戦い」との思いで実現をめざしてこられました。療養所を安心して生活できる場とするためには、同法の制定がどうしても必要だったのです。


――どのような背景があるのですか。

谷合 入所者は平均年齢が78・9歳(07年5月1日現在)に達し、高齢化が進んでいます。昭和30年代には1万2000人を超えていた入所者は現在、2890人(同)に減少。毎年約200人がお亡くなりになり、10年後には1000人以下に激減すると推定されています。

 入所者はハンセン病の後遺症に加え、多くの方が高血圧や糖尿病などの慢性疾患を抱え、医療の必要性と多様性が増しています。その一方で、医師数は定員割れが続き、療養所の職員も減少しています。入所者の方々は近い将来、療養所が医療機関として立ちゆかなくなるのではないかと危機感を募らせており、各療養所で自主的に将来のあり方に関する構想を検討されています。

 また、入所者の方々は、親しい「療友」が一人二人といなくなっていく寂しさをかみしめながら、生活を送られています。先細る人間関係の中で、「孤立」することに大きな不安を感じていらっしゃいます。

 私は07年10月、2カ所の療養所、「邑久光明園」と「長島愛生園」(ともに岡山・瀬戸内市内)を訪ね、自治会の方から要望を聞きましたが、「国が本当に最後まで責任をもって面倒を見てくれるのか」と強い不安を訴えておられました。

 国は01年12月、「意思に反して退所、転園させることなく、終生の在園を保障するとともに、社会の中で生活するのと遜色のない水準を確保するため、入所者の生活環境および医療の整備を行うよう最大限努める」と約束していますが、現実には入所者が減り、療養所の“空洞化”が進む中で、入所者の方々は約束の確実な実行を担保する法整備を求められていました。


――基本法のポイントは。

谷合 最大のポイントは、療養所の地域開放を可能とし、入所者と地域住民とで療養所を共用できるようにしたことです。療養所の土地、建物、設備などを自治体や地域住民らが利用できるよう規定した基本法の成立を受け、今後、各療養所ごとに地域の特性に合った将来構想が本格的に検討されます。


――療養所の医療や介護の確保については。

谷合 基本法では「国は医師、看護師および介護員の確保など、医療および介護に関する体制の整備に必要な措置を講ずるよう努める」と明記し、医療・介護サービスの確保に関する条文を設けました。

 また基本法では、「国は入所者の意思に反して、現に入所している療養所から退所させ、または転所させてはならない」と明記したことも重要です。多くの入所者の方は、今いる療養所で静かに生涯を全うしたいと考えておられます。入所者の方々は、国の政策で深刻な人権侵害を受けてきたのであり、最後の一人まで、そうした、ささやかな願いが裏切られるようなことがあってはなりません。


――公明党として今後、どうハンセン病問題に取り組んでいきますか。

谷合 基本法は入所者の方々の生活保障と各療養所の将来構想の実現に向けた「入り口」です。各療養所の将来構想は、その策定から実現に至るまで、官民あわせたバックアップが不可欠です。国会議員・地方議員としても、苦しまれている入所者の側に立った、党派を超えた支援が必要です。

 医師の確保一つをとっても、わが国で医師不足が深刻な社会問題となる中で、関係者の理解なしには前に進みません。公明党として入所者の方々を温かく包んでいけるような施策が展開されるよう、全力を尽くしていきます。




<メモ>
国立ハンセン病資料館では29日、療養所の入所経験者を講師に、講演会「療養所の歴史を語る」が開催される。午前10時からと午後1時からの2回。各回、先着150人まで受け付け。入場無料。電話042―396―2909

(2008年6月26日付 公明新聞)