政府がクラスター弾禁止条約に同意――山口那津男・党外交安保調査会長(参院議員)に聞く


「平和の党」の存在感発揮
首相の決断促した公明
浜四津代表代行らの申入れで流れ変わる
 地中に残された大量の不発弾が、子どもなど民間人に多大な被害を及ぼすクラスター弾――。この残虐な兵器を事実上全面禁止する条約が5月30日、有志国による軍縮交渉「オスロ・プロセス」のアイルランド・ダブリン会議の席上、参加約110カ国の全会一致で採択されました。日本政府は当初、条約同意に慎重な姿勢を示していましたが、浜四津敏子代表代行や山口那津男・党外交安全保障調査会長(参院議員)らが申し入れを行うなど公明党の強い姿勢を受け、福田康夫首相は条約への同意を決断しました。今回の条約に日本が同意した意義や公明党の果たした役割、今後の課題などについて、山口調査会長に聞きました。


『廃絶への大きな一歩』
『民間人が犠牲に 不発弾被害繰り返すな』


――政府がクラスター弾を事実上、全面禁止する条約に同意したことをどう評価しますか。

山口 福田首相の英断だと思います。トップの政治決断がなければ、このような進展はあり得ませんでした。政府内でも全面禁止への慎重論が根強かったからです。その背景として、同盟国である米国が条約に不参加であること、安全保障上の抑止力として自衛隊がクラスター弾を保有していることなどが挙げられます。


――公明党はどんな役割を果たしたのですか。

山口 日本が「平和国家」として存在感を発揮するための“リード役”を、公明党が果たしたと自負しています。

 ダブリン会議では、全面禁止の条約を採択する機運が大きな高まりを見せる一方で、日本は慎重姿勢を崩していませんでした。公明党は、日本がこうした機運に乗り遅れ、軍縮へのイニシアチブ(主導権)を発揮するチャンスを逃してはならないと考え、5月23日に浜四津代表代行と私たちが、ダブリン会議での条約採択へ主導的な役割を果たすよう福田首相に申し入れました。これは、従来の方針を転換するよう首相の決断を求めるものでした。

 その席上、福田首相は「軟着陸させるので任せていただきたい。時間を頂きたい」と、従来より踏み込んだ対応が必要との認識を表明し、そこから流れが大きく変わりました。このニュースは、ダブリン会議に参加する政府代表団やNGO(非政府組織)にもすぐに伝わり、大きく歓迎されました。


――なぜ、条約への同意を強く求めたのですか。

山口 クラスター弾は、特に非人道的で残虐な兵器です。太平洋戦争で悲惨な被害をもたらした焼夷弾もその一種です。ベトナムやラオス、カンボジア、アフガニスタンなどアジア地域での紛争におけるクラスター弾の子爆弾による不発弾被害も深刻です。「平和の党」を標榜する公明党として、こうした“悪魔の兵器”を見過ごすことはできません。公明党は不発弾被害に関する現地視察などを通して、国会でもいち早く取り上げ、さまざまな観点から問題提起してきました。

 これまで公明党は、1997年に小渕恵三外相(当時)の決断を促して対人地雷禁止条約(オタワ条約)締結を実現し、その後も除去支援を推進するなど、対人地雷対策に積極的に尽力してきました。これも、クラスター弾問題に取り組む大きな動機になっています。対人地雷と一緒に不発弾が地中に埋まっており、犠牲者を生むクラスター弾の存在から、目をそらすことはできないからです。

 私自身、2002年にアフガニスタンで地雷除去活動に携わる国連担当者から不発となったクラスター弾の子爆弾を手渡され、その被害の深刻さを聞き、衝撃を受けたことが、この問題に取り組むきっかけとなりました。04年にはアフガニスタンで現地調査を行い、問題の重要性を改めて痛感しました。


――今後の課題は。

山口 今回の条約採択や年内にも予定される署名は、クラスター弾廃絶への大きな第一歩ですが、現状では米国や中国、ロシアなど大量製造・保有国が条約に参加していない点が、国際社会にとって課題です。

 クラスター弾規制に関しては、今回の条約とは別に、これらの国も参加する「特定通常兵器使用禁止条約(CCW)」の枠組みがあります。そこでの規制強化への交渉は現在、難航していますが、私は現状打開への可能性を確信しています。

 オタワ条約も今回と同様、米国などが不参加でしたが、条約締結を契機に、CCWの枠組みでの規制が大きく前進しました。政府に対し、今回の首相決断を突破口にして、CCWの枠組みにおける実効的かつ包括的な規制の合意に向け、主導的な役割を果たすよう働き掛けていきます。

 また、今回の条約で日本は、陸上自衛隊が保有するクラスター弾をすべて破棄することになり、防衛政策の見直しが必要となります。国民の生命・財産を守る観点から真摯に検討したいと思います。


 
クラスター弾は、多数の子爆弾を一つの弾頭に詰めた兵器。航空機から投下または地上から発射され、空中で子爆弾を放出し、広範囲にダメージを与える。不発弾となる子爆弾が多く、半永久的に無差別に被害を及ぼし、復興を妨げる。不発弾による死傷者の大半は民間人。

(2008年6月8日付 公明新聞)